数学の面白さ




せっかくのHPですから、数学公式だけでなく、私なりの数学への感想も書き添えることにします。数学が昔から好きだったかと言いますと、そうではありませんでした。小学生の頃、進学教室(塾)に通わされて、テストの中で、しち面倒くさい計算をさせられるのはいやなことでした。友達の中にはソロバンを習っているのもいましたが、別に習いたいとは思いませんでした。ただ、テストに出るので算数を勉強しただけのことです。しかし、今から振り返ると、それも楽しい思い出です。なにしろ昔の話ですから。

小学生の時に習った算数は、その後の数学よりも難しいと思えるところがあるのがおかしな所です。たとえば、つるかめ算などです。今の小学生は教えられないので言葉も知らないかもしれませんが、私の頃には、つるかめ算という問題がありました。これはいわゆる連立方程式の問題を小学生向きにx、yを使わないで表現したものです。x、yを使いませんので、かえって判り難くなっています。しかし、難しいのが好きな人にとってはかえって面白いと思うのではないでしょうか。私にとっては、面白いと言うより、x、yを使わないとこれだけ表現がややこしくなるのかと感じさせられます。x、yがいかに便利なものであるかがわかります。その便利さを認識するためにも、反面教師としてつるかめ算は、知識として知っておく必要があるのではないでしょうか。


つるかめ算

ひとつ例を出しておきましょう。

ここに鶴と亀が23匹います。足の数を数えると全部で56本ありました。さて、この中に鶴は何匹、亀は何匹いるでしょうか?

どうですか?解けますか?簡単と言えば簡単、難しいと言えば難しいのがつるかめ算です。やり方を知っていれば簡単で、知らないと難しいのです。当たり前ですね。

では、答えを見てみましょう。答え:鶴は18匹、亀は5匹です。

どうやって答えを見つけるかを説明しましょう。小学生対象ですからx、yを使わないようにします。まず、23匹全部が鶴だったとしましょう。すると、足の数は、鶴は二本足ですから、23*2=46となります。しかし、実際は56本ですから、その増えた理由は亀(足が4本)が混ざっているからです。ですから、増えた分だけ亀がいることになります。つまり、亀の足と鶴の足の差は2本ですから、(56−46)/2=5 が答えとなります。亀が5匹ですから、鶴の数は、全体の23匹から亀の数を引いたもの、23−5=18 となります。

どうです。簡単と言えば簡単ですね。しかし、解法を知らずに、自分で思いつける人は少ないでしょう。つまりは難しいと言うことです。x、yを使って連立方程式にしてしまえば、凄く簡単になります。

鶴と亀を別の動物や事例に置き換えることもできます。
ボールが5つ入った箱と、2つ入った箱が会わせて40個あります。ボールの数は全部で125個です。さて、ボール5つの箱とボール2個の箱はそれぞれいくつづつあるでしょうか?
この答えはそれぞれやってみてください。成功を祈ります。



ピタゴラスの定理(三平方の定理)

ピタゴラスの定理というのがあります。教科書に載っていますので、良く知られています。この定理は、面白いというより、凄いですね。紀元前の時代に、よくもこれだけ凄い定理を発見したものです。いや証明したと言うところが驚きです。(注   ピタゴラスが証明したかどうかは確認していません。)

最近の教科書を見ると、ピタゴラスの定理の証明が私の習ったのと違っているので驚きました。証明方法は100以上あるらしいのですが、私にとって最初に習った証明が一番愛着があります。たしかに最近の教科書の証明は、数学的にも直感的にも判りやすく、教科書には向いていると思いますが、しかし、では私の習ったあの難しい証明はどうなったのでしょうか。あれがピタゴラスのやった証明ならば、歴史的価値があるわけで、あの証明方法を教えないのはとても残念な気がします。

そこで、一応昔の証明方法を説明しておきます。


三角形ABCは角Aを直角とする直角三角形とします。ABDEおよび、ACHI、BCFGはそれぞれ正方形とします。そのとき、ACHIとABDEの面積の合計がBCFGの面積に等 しいというのがピタゴラスの定理です。

これを証明してみます。まずAからBFに平行な直線を引き、それとBCとの交点をKとし、GFとの交点をJとします。次にFからABに平行な直線を引き、それとAJの交点をLとし、EBの延長線上の交点をNとし、ACとの交点をMとします。これで証明のお膳立てができました。

まずBFJKの四角形に注目しましょう。この四角形とABFLと面積が同じことはおわかりでしょうか?BFという共通の辺があり、高さも同じだからです。次にABFLとABNMに注目します。この二つの四角形はABという共通辺を持ち、高さも等しいので同じ面積であることが判ります。



 図1.1
ピタゴラス定理図

さて、次に注目するのは、三角形ABCと三角形BFNです。最初の条件からBCとBFは等しく、次に、平行に引いた線の交差したところですから、角BNFは角BACと同じ直角です。また、角NBFと角ABCは直角マイナス角NBCですから、等しいことがわかります。それゆえ、三角形BFNと三角形ABCは合同であることが証明されました。

この三角形が合同であるなら、辺BNは辺ABと等しくなります。また、最初の条件からABとEBは等しいのですから、BNとEBは等しくなります。つまり、四角形ABNMと四角形ABDEは面積が等しいことになります。

纏めとして、いま証明したことを逆にたどりますと、ABDE=ABNMであり、ABNM=ABFL、ABFL=BFJKですから、ABDE=BFJKであることが証明されたことになります。

この同じ証明方法は、四角形KJGCとACHIの間にも成り立ちますので、ACHI=KJGCとなります。つまり、KJGC+BFJK=BFGCですから、ABDE+ACHI=BFGCが証明されたことになります。



その他のピタゴラスの定理証明方法は別ページにて解説してあります。


ユークリッド(Euclid)



数学者の中には尊敬できる人がなぜか沢山います。ユークリッドもその一人です。最近では「ユークリッド」と言わないで「エウクレイデス」とか、「エウクレイドス」などと言うそうですが、愚かなことです。原語の発音など遠の昔に判らなくなっているのであって、ユークリッドでもエウクレイデスでも同じことです。あえて名前を原語の発音に近づけるという考えが間違っていると私は思います。名前の表記は慣例に従うのが一番正しいのです。その点、アメリカ人は頑固に英語なまりを守り続けています。アウグスティヌスがオーガスチンだとか、ヨハネがジョンなど、挙げればきりがありません。日本人はそれだけ素直というか、お人好しというか、世界の大勢を知らない人が多いようです。とは言うものの、「エウクレイデス」が一般化するなら、それを受け入れるのが私の立場です。今のところ、ユークリッドという名も耳にしますので、ここでは昔の慣例通りにユークリッドと表記することにします。

ユークリッドは紀元前300年頃にエジプトのアレクサンドリアで活躍したギリシャ人数学者です。彼の書いた「ストイケイア」という本は、その後の数学発展の基礎を築いた本で、歴史的にはきわめて重要なものです。日本では「幾何学原本」と言う題で紹介されていますが、13巻もありますので、その全訳が出版されたかどうか判りません。部分訳は出ているようですので、是非読みたいと思っています。

彼は幾何学上のすべての命題や定理を、5つの基本的公理から証明できるとし、証明の持つ方法論としての重要性を歴史上初めて人類に教えてくれました。ユークリッドが果たした人類への貢献は計り知れないものです。その割には、一般には彼の偉大さが認められていないような気がします。グーテンベルグの聖書を大事にするのも良いですが、ユークリッドの写本を研究するとか、最初の印刷本を集めるなどする人がいても良いのではと思います。紀元前300年に書かれた本が今日に至るまで、どのような過程で写本され、保存されてきたかはとても面白いテーマだと思うのですが、日本語ではその手の本はまだ目にしていません。

彼の挙げた5つの公理の内、第五公理(つまり平行線の公理)を認めない幾何学として、今日非ユークリッド幾何学なるものが生まれています。この非ユークリッド幾何学が生まれる原因の一つは、ユークリッド自身に遡ると言えないでしょうか。なぜなら、ユークリッドが第五公理を記述する際、他の公理を簡潔に書いたのに対して、なぜか第五公理だけを回りくどいやり方で記述しているからです。このような書き方では、疑いたくなるのは当然のことです。おそらくユークリッド自身も第五公理に疑問を感じていたのではないでしょうか。

ですから、ユークリッド幾何学だけがユークリッドの功績ではなく、非ユークリッドも含めた数学全体が彼の築いた基礎の上に成り立っているのです。


デカルト


デカルトの「方法序説」は、私にとって読んで良かった本のひとつです。この本のおかげで、人生に目を開かれましたし、数学にも興味を持つことができました。もっとも、デカルトのおかげで、哲学や宗教に興味を持ち、結果的に私の関心が数学から離れてしまいましたが、それでも数学そのものへの関心が無くなったわけではありません。数学を専門としなかったことにより、かえって数学者とは別の視点を持つことが出来たとも言えます。何事もものは考えようです。良い方向から考えないと、自分の首を絞めることになります。



テイラー展開 (追加 05/05/07)


(「テーラー展開」ではなく、「テイラー展開」と表記するそうです。そうなんですか。知りませんでした。以下、全部「テイラー」に修正します。)

テイラー展開は、私に大きなインスピレーションを与えてくれましたので、ここに書き込んでおきます。素晴らしい発想を教えてくれたテイラーという人はどういう人なのだろうかと思って調べてみたのですが、ほとんどの本には何も書かれていませんでした。あまり評価されていないと言うことでしょうか。しかし、このアイデアの素晴らしさは誰も否定できません。

ネットで調べてみると、このアイデアはテイラー以前に発見されていたという評価も見つけましたが、詳しいことは判りません。英語で調べると、ようやく彼の氏名が判明しました。Brook Taylor(1685-1731)という人物で、イギリスの数学者だとのことです。ずいぶん昔の人ですね。ニュートンのすぐあと、オイラーよりも前の人物です。この時代にすでにテイラー展開を見つけていたとは、その偉大さに感銘します。

テイラー展開の解説書はたくさんありますが、それらはみな微分を前提に説明してありました。おそらく、テイラー自身はこの方向から見つけたのでしょう。しかし、私の関心は級数ですので、ここでは級数の観点からテイラー展開を解説してみます。なお、専門家ではないので、説明の正確さについては保証の限りではありません。 (^^;;

テイラー展開の求め方は、微分を使うと簡単ですが、級数として考えても結論は同じです。つまり、
e^x= 1 + x/1! + x^2/2! + x^3/3! + x^4/4! + . . . . となるのですが、e^x = 1 + a1*x + a2*x^2 + a3*x^3 + . . . として、a1, a2, a3, の極限値を計算すれば簡単に値を求めることが出来ます。昔は計算が面倒だったので、微分を基本にしたのでしょうが、今ではパソコンがあるので、計算結果はすぐに出ます。

同じ要領で、log(1+x)、sin(x)、cos(x)、tan(x)、arctan(x) など、ほとんどすべてのテイラー展開式を求めることが出来ます。私は、このアイデアから Σ1/n を求めようと言う気になりました。そして、その結果、・・・時間はかかりましたが、ようやく見つけることが出来ました。それについては、「hirokuroの公式」ページで書いたとおりです。また、n! も見つけました。極限値を計算するのは、どんな式でも可能ですから、原理的にはどんな式でもテイラー展開を求めることが出来ます。ただし、項数が有理数になると言う保証はありません。

結局、テイラー展開は、微分よりも級数として説明したほうが判りやすいという結論になりました。

テイラー展開式については、「参考となる公式集」に書いているので、ここには載せませんが、どれも非常に綺麗で素晴らしいものです。こういう式を発見したテイラーさんの偉大さは、いくら強調してもしすぎると言うことはありません。

数学史の本では絶対取り上げて欲しい人物ですね。せめてブルック・テイラーという名前くらいは誰でも知っているくらいにして貰いたいものです。



背理法


背理法 (reduction to absurdity) についてHPに載せたいと思っているのですが、載せたいと考えていた種本が見つかりません。少しあやふやですが、かつて感じた背理法の素晴らしさを私なりに説明してみたいと思います。

初めて背理法の説明を読んだとき、面白いやり方があるものだと感心しました。しかし、そのやり方を自分も使ってみたとき、その有効性は思っていた以上でした。今の数学証明で、背理法を使わない例はほとんど無いのではないでしょうか。かの有名なワイルズによるフェルマー最終定理の証明に背理法が使われたかどうか知りませんが、ゲーデルの証明では背理法が使われています。私の最初の印象では、背理法は証明の異端児でしたが、今や背理法こそ証明の王道である認識しています。背理法を学ぶだけでも数学を勉強する価値があります。

私が背理法の有効性に驚いたのは、√2が無理数であることの証明を習ったときです。√2が無理数であることの証明は、高校レベルで習うのではないかと思いますが、背理法を使わずにこれを証明しようとしても、うまくいきません。おそらく、背理法なしには誰も証明できないのではないでしょうか。

付録   「有理数、無理数は誤訳である」との指摘が「数学嫌いが治る本」(竹内薫著)に載っていました。これはとても重要な指摘だと思い、ここに引用しておきます。有理数は rational number で、これを直訳して「有理数」という訳語が出来上がったのですが、竹内先生によると、rational は「比」という意味で、分数になる数を意味しているとのことでした。これを「有理数」と訳したのではratioの意味が判らなくなってしまいます。無理数についても同じで、irrational number とは、分数に出来ない数と言うことで、無理数と訳すよりも「無比数」と訳した方が良かったとのことでした。なるほどと言える説明ではないでしょうか。重要なことを教えていただいた気がします。竹内先生、ご指摘を感謝します。


さて、√2が無理数であることを背理法を使って証明してみましょう。

まず、√2が有理数であると仮定します。逆を証明するかのような雰囲気になるのが奇妙であり、また面白いところです。有理数であるとは、整数a割る整数bという形で書き表せると言うことです。aとbはお互いに公約数がないようにしておきます。つまり、√2=a/b となります。

次に、これを2乗すると、2=a*a/b/b となります。2*b*b=a*a です。これは、aが2の倍数であることを示しています。次に、aが2の倍数なら、a=2*k と表せる、整数kが存在しますので、a=2*kをaに代入します。すると、2*b*b=(2*k)*(2*k) ですから、2*b*b=4*k*k となります。両辺を2で割ると、b*b=2*k*k となり、bもまた2の倍数であることが判ります。しかし、最初に約数がないように設定してあるという条件と矛盾しますので、このような矛盾は起こるはずがありません。つまり、最初に設定した√2が有理数であるという仮定が間違っていたことになります。つまり、√2は有理数ではないことが証明されました。有理数ではないとは、つまりは無理数であるという証明になるのです。

面白い論法だと思いませんか。屁理屈ではないのですよ。



無限降下法   (追加 07/02/24)


無限降下法という証明方法があります。これは背理法の延長のようなものだと思いますが、背理法よりやや複雑になっています。「無限降下法」という言葉は聞いたことがありますが、今まであまり関心がわきませんでした。しかし、ボイヤーの「数学史3」(p124 朝倉書店)を読んでいて、とても示唆を受けたので、ここに私なりに咀嚼した上で、解説しておきます。

かの有名なフェルマー大先生が最初に証明したとのことですが、√3が無理数であることを無限降下法で証明します。

√3=a1/b1とします。このa1, b1 は正の整数で、a1>b1とします。2=(√3+1)(√3-1) ですから、√3=(3-√3)/(√3-1) となります。このときの右辺の√3にa1/b1を代入します。すると√3=(3b1-a1)/(a1-b1) となります。ここで、a2=3b1-a1、b2=a1-b1 となるようなa2, b2 を定義します。

さて、a1/b1は 3/2<a1/b1 で、a1/b1<2 でもあります。ゆえに3b1<2a1、ゆえに3b1-a1<a1 となります。つまり、a2<a1 ということです。
また、a1<2b1 ですから、a1-b1<b1 となり、b2<b1 を得ます。つまり、a2/b2=a1/b1 で、a2もb2もa1, b1 よりも小さい正の整数ということになります。

次に、√3=a2/b2 を前提に、再び√3=(3b2-a2)/(a2-b2) という式を作り、それをa3=3b2-a2, b3=a2-b2 として、比較すると、ここでもa3<a2, b3<b2 なるa3, b3 を得ることが出来ます。そして、同じことはa4, b4 でも可能であり、a5, b5 と続けることが出来ます。この作業は無限に可能ですが、正の整数は無限に減少することはできません。こういう矛盾が生じるということは、つまりは最初の√3=a1/b1 と仮定したことに無理があったことになります。それゆえ、√3を整数a1/b1 で表示することは出来ないということであり、√3が無理数であることが証明されました。



ガロアの群論


エバリスト・ガロア(Evariste Galois)は、数ある天才的数学者の中でもきわめて重要な人物です。彼は群論の基礎を作った人物ですが、若干20歳で殺されてしまいました。人類史上、心痛む事件の中でもことのほか、残念な事件です。

ガロアは1811年10月25日、フランスのパリ近郊の町で生まれました。彼の少年時代は、フランス革命後の政治的混乱の中にありました。彼は過激な共和主義者となり、王制に反対して何度も投獄されます。しかし、その政治活動の合間に数学研究にも力を注ぎ、群論というアイデアを発見します。彼の最初の論文は、表現が未熟だったためか、当時の数学者には評価されませんでしたが、後にその真の意味が理解されて高い評価を得ることになります。彼はその結果を見ることなく、1832年5月30日、決闘により重傷を負い、翌日、病院で死亡します。

彼は決闘の前日、友人たちに遺書を送っていますので、死を覚悟していたようです。彼は、死を前にして、「時間がない」と叫びながら、群論の論文を完成させたとの物語は、実にドラマチックですが、ある評論家によると、それは作り話だとのことです。決闘の原因は、女性問題であると言われていますが、政府のスパイによる陰謀だとの説もあります。

残念ながら、ガロアの書いた群論の日本語訳を見たことがありません。これほど重要な本が訳されていないはずはないのですが、もっと慎重に探して見なければなりません。今のところ、私のレベルではよく理解できないのですが、5次以上の方程式の一般解を数学的方法で解くための必要十分条件を発見したと言うことでしょうか?5次以上の方程式が一般的には解くことが出来ないのを証明したのはアーベルだったかもしれません。

数学を専攻していませんので、この初歩的レベルでさえ、良く知らないのです。一応、ガロアと比べると甚だ初歩的な話しですが、ここで参考までに、方程式の解法を載せておきましょう。2次方程式の解法までは理解できるのですが、3次となると、理解するのに結構苦労します。

1次方程式の解法

ax+b=0 という式ですが、あまりに簡単すぎて書くのも無意味ですが、両辺をaで割って、x+b/a=0 となります。移行して、x=-b/a となります。これが答えです。何事も最初は簡単です。では2次方程式はどうでしょうか。簡単に一般解を求められるでしょうか。

2次方程式の解法

a*x^2+b*x+c=0 という式です。少し考え込んでしまいます。どうやって解いたか忘れてしまいました。
3*x^2-5*x+1=0 ならば、(x-5/6)^2=13/36 ですから、x=5/6+-√13/6 となります。これの一般化ですから、(x+α)^2=βの形に持っていけばいいわけです。

まず、両辺をaで割って、次に左辺が (x+b/2/a)^2 となるように、残りの数を右辺に移項します。右辺は b^2/4/a^2-c/a となります。これを書き直すと、(x+b/2/a)^2=(b^2-4*a*c)/4/a^2 となります。2乗を消すと、x+b/2/a=1/2/a*√(b^2-4*a*c) となります。これを整理しますと、x={-b+√(b^2-4*a*c)}/2/a となります。√の前の記号は+-可能ですから、もう一つの答えが、x={-b-√(b^2-4*a*c)}/2/a となるわけです。思い出してみると簡単ですね。

3次方程式の解法

3次方程式とは、a*x^3+b*x^2+c*x+d=0 という式です。この式をわかりやすく解くためには、まずいくつかの変更を加えます。両辺をa で割ると、b/a 、c/a 、d/a 、などができます。これは定数ですから、それぞれ、a b c と置き換えても同じことです。つまり、x^3+a*x^2+b*x+c=0 となります。次に、x=z+e と置いて、代入します。zは変数、eは定数です。これを展開して整理すると、z^2 の項目が 3*e+a となり、3*e+a=0 となるようにeを定めることが出来ます。結局は、x^3+a*x+b=0 の方程式を解くことが出来れば、最初の一般式を解くことができます。

慣れてないと、このレベルでさえも、わけが分からなくなりますが、大丈夫でしょうか。
では、次に進みます。

x^3+a*x+b=0 として、x=l+m とします。l とm は任意の定数です。x^3=(l+m)^3ですから、x^3=l^3+3*l^2*m+3*l*m^2+m^3 となります。この右辺を左辺に移項すると、x^3-l^3-3*l^2*m-3*l*m^2-m^3=0 となります。これを整理して、x^3-3*l*m(l+m)-(l^3+m^3)=0 とします。

この式の中に l+m の部分がありますが、最初の約束でx=l+m と定義したのですから、これをx で置き換えることが可能です。結果は、x^3-3*l*m*x-(l^3+m^3)=0 となります。これは、最初の設定の式、x^3+a*x+b=0 と同じですから、a=-3*l*m、b=-(l^3+m^3) となります。

ここで、a=-3*l*m の両辺を3乗し、-(l^3+m^3)=b、l^3*m^3=-a^3/27 の部分に注目します。
(x-α)*(x-β)=x^2-(α+β)x+(α*β) ですから、α=l^3、β=m^3 と見立てると、x^2-(l^3+m^3)x+(l^3*m^3) となり、x^2+b*x-a^3/27=0 と書き直すことが出来ます。これを解くと x=(-b+-√(b^2+4*a^3/27))/2 となり、それゆえ、l^3=(-b+√(b^2+4*a^3/27))/2、m^3=(-b-√(b^2+4*a^3/27))/2 となります。

さて、三次方程式の解であるxは、x=l+m ですから、l, m を代入して、x = [3]√{(-b+√(b^2+4*a^3/27))/2} + [3]√{(-b-√(b^2+4*a^3/27))/2} となります。
(注   [3]√という記号は3*√でなく、x^3=2を変形してできるx=[3]√2の形の3ルートを意味します。)

これがひとつの解なので、他の解はこれを利用してたやすく求めることが出来ます。

結構難解な説明ですが、何度も考えると、ようやく理解できます。つまり、3次方程式を2次方程式に変換しているわけです。


追加 (07/11/06)

解を求める操作の途中に出てくるルートの中身 b^2+4*a^3/27 はマイナスになることがあります。その場合は虚数となりますが、一見して「これで実数解はなし」と言いたくなります。しかし、3次方程式の場合は不思議なことに、最終的にはこの虚数が無くなり、実数解が現れます。上記の解の公式では虚数が残るので、その場合の実数解の求め方を説明します。

b^2+4*a^3/27<0 のときは虚数となり、 x = [3]√{(-b+√-(b^2+4*a^3/27)* i )/2} + [3]√{(-b-√-(b^2+4*a^3/27)* i )/2} となります。しかし、この x は虚数ではありません。なぜなら、前半と後半の虚数部分がうち消し合って消えるからです。

前半の[3]√{(-b+√-(b^2+4*a^3/27)* i )/2} も、後半の [3]√{(-b-√-(b^2+4*a^3/27)* i )/2} も似たような形をしていますが、どちらも展開することが出来ます。

A=-(b^2+4*a^3/27) とし、計算上の都合から場合によっては全体にマイナスを掛けて (-b) をプラスにしておきます。また、式を見やすくするため、[3]√2を掛けて 1/2を消しておきます。C(n,r)は二項係数です。

[3]√(b-√A*i) = C(1/3,0)*b^(1/3) + C(1/3,1)*b^(1/3-1)*(-√A*i) + C(1/3,2)*-b^(1/3-2)*(-√A*i)^2 + C(1/3,3)*-b^(1/3-3)*(-√A*i)^3 + ...
これは無限式となります。

後半の [3]√(b+√A*i) も同じように展開できます。
C(1/3,0)*b^(1/3) + C(1/3,1)*b^(1/3-1)*(√A*i) + C(1/3,2)*b^(1/3-2)*(√A*i)^2 + C(1/3,3)*b^(1/3-3)*(√A*i)^3 + ...
となります。

違いは -√A*i か √A*i だけです。前半と後半を足し合わせる過程で最初に現れる √A*i-√A*i は零であり、2番目は (√A*i)^2+(-√A*i)^2 で虚数ではなくなり、3番目は (√A*i)^3+(-√A*i)^3 で消え、4番目は虚数ではなくなります。このように、虚数部分はすべて消えて、実数部分だけ残るので、全体としては実数となります。

このやり方でも無限式が発散して値を持たないことがあります。そのようなときは、x^3+a*x^+b=0 に戻り、ここで x=1/y として、式の形を変更します。それを整理すると y^3+a/b*y^2+1/b=0 となります。この2次項目を消すために、y=z-a/3b を代入すると、z^3-a^2/3b^2*x+2a^3/27b^3+1/b=0 となります。ここで、A=-a^2/b^2, B=2a^3/27b^3+1/b, C=B^2+4A^3/27 とすると、z = [3]√{(-B+√C)/2} + [3]√{(-B-√C)/2} となります。C<0 のときは、先のやり方と同様に、この式を展開して虚数を消すことが出来ます。求めたzを順次y, x と戻してゆくと、最終的にxの実数解が出てきます。

それでも発散するときは、再度、x=1/y として同様の操作を繰り返します。すると、数回以内で収束するようになります。


4次方程式の解法

4次方程式の解法をHPに書き込もうとしたのですが、ただ、困ったことに以前読んだ本が見あたりません。ならば自分で解いてみようと思ってやってみましたが、まったく歯が立ちませんでした。お恥ずかしい限りです。(^^;;;  数学的に実力のある人なら、4次方程式の一般解くらいは自力で出せるのかもしれませんが・・・。結構、難しそうですね。近い内にその本を探してきて載せたいと思います。

付記

教えてもらった4次方程式の解法を私なりに修正して説明してみます。4次方程式を解くための手がかりは2次方程式に還元することにあります。

そこで、まず普通の4次方程式 a*x^4+b*x^3+c*x^2+d*x+e=0 をaで割って、それにx=y-b/(4a)を代入します。すると、x^3の項目が消えて、y^4+p*y^2+q*y+r=0という形になります。これを便宜上、x^4+a*x^2+b*x+cと表記しておきます。つまり、すべての4次方程式は、3次項目のない形に還元することができるということです。

そこで、x^4+a*x^2+b*x+c=0 を解くことにします。

ここで、x^4=-a*x^2-b*x-c [01式]と変形し、左辺を (x^2+p)^2=x^4+2p*x^2+p^2という形になるよう、強引に持ってゆきます。左辺に足りないのは2p*x^2+p^2ですから、これを[01式]の両辺に足します。すると、(x^2+p)^2=2p*x^2+p^2-a*x^2-b*x-cとなります。右辺を纏めると、(2p-a)*x^2-b*x+p^2-c [02式]となります。

pは自由に選べる数なので、右辺も平方式になるようにpを定めることにします。そのために、右辺を(2p-a)*{x^2-b*x/(2p-a)+(p^2-c)/(2p-a)} と変形し、このx式が重根を持つようにpを定めます。つまり、(b/(2p-a))^2-4*(p^2-c)/(2p-a)=0 [03式] となればよいということです。この条件のとき、x=b/2(2p-a) となり、(x^2+p)^2=(2p-a)(x-b/2(2p-a))^2 となります。

重根の条件を整理しておくと、先の[03式]は、pについての3次方程式になっていて、8*p^3-4a*p^2-8c*p+4ac-b^2=0 と纏めることが出来ます。p=q+a/6 と置いて整理すると、q^3+(-a^2/12-c)*q-a^3/108+ac/3-b^2/8 となります。ここで、A=-a^2/12-c, B=-a^3/108+ac/3-b^2/8, C=B^2+4*A^3/27, と置くと、q=[3]√{(-B+√C)/2} + [3]√{(-B-√C)/2} となります。qは実数なので、複素数解は無視されます。qにa/6を加えるとpになります。

(x^2+p)^2=(2p-a)(x-b/2(2p-a))^2 の2乗をはずすと、x^2+p=√(2p-a)*(x-b/2(2p-a))、x^2+p=-√(2p-a)*(x-b/2(2p-a)) となり、これを整理して、x^2-x*√(2p-a)+b*√(2p-a)/2(2p-a)+p=0、 x^2+x*√(2p-a)-b*√(2p-a)/2(2p-a)+p=0 という式を得ます。これらの式の4つの解が4次方程式の解となります。

かなり強引なやりですが、これで解けています。こういう強引さが通用するとは・・・、大きな教訓ですね。




話は横道にそれますが、長沼伸一郎氏の「一般相対性理論の直感的方法」(通商産業研究社、1990年発行)について、最近耳にしませんが、評価はどうなのでしょうか?私は物理についてあまりよく判りませんが、彼の発想方法はとても面白く、また重要であると思いますので、ここでも紹介しておきたいと考えています。

相対性理論の解説書を読むと、どう考えてもイメージの湧きにくい説明が並べられていますが、長沼さんの説明を読むととても明快によくわかります。難しいと考えるから難しくなるのであって、要は説明の仕方の問題であることは、数学にも当てはまります。またその他の分野でも言えることです。難解なものに出会ったときは視点を変えてみるということを教えてくれた書物として、私にとって重要な書物となっています。

なお、「物理数学の直感的方法」(通商産業研究社、1987年発行)という著書もあります。

微分を習ったときに経験したことですが、微分は難しいとの前宣伝があり、私など「難しい」と思いこんでいました。そのような気持ちで習ってみると、たしかに難しくて、わけが分かりませんでした。一応、テスト問題が解けるように、公式だけは覚えましたが、微分の本質はまったく判りませんでした。しかし、今から考えると、「判らなかった」のではなく、「判らないと考えた」だけだったのです。判らないという思いこみが、判らないようにする方向へと考えを向けてゆくのです。人間の発想の恐ろしさです。観点を変えて、微分は簡単だと思って勉強してみると、何のことはない、簡単なことなのです。どうしてこれを難しいと考えたのか不思議な気がします。やはり、最初の「微分は難しい」との噂を真に受けたところに間違いがあったのです。数学教師は、判りやすい説明を身につけることも必要ですが、数学は難しくないと思わせる心理的なアプローチも大切であることを認識して貰いたいものです。数学はおもしろいし、少しも難しくありません。











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