スターリングの公式についての纏め


スターリングの公式については、先に「もう必要なくなった」と書いてしまいましたが、実際上の有用性や歴史的重要性を否定しているわけではありません。私の公式もスターリングの公式を使って求めたわけで、スターリングへの感謝と尊敬の気持ちは人後に落ちるものではありません。ここに彼の伝記を纏めて、公式についてもさらに詳しい説明を載せておきます。

スターリングの公式を発見したスターリングという人物は、スコットランド人でジェームズ・スターリング(James Stirling)という名前でした。彼は1692年、スコットランドのガーデンというところで生まれ、1770年、エジンバラで死んでいます。レオンハルト・オイラーとほとんど同時代の人物だったことになります。

スターリングの生涯はスコットランドの歴史と連動しているところがあります。スコットランドは1603年以来、イングランドと同君連合を組んでいましたが、1707年の合併法によりブリテンの名の下にイングランドと合体することになりました。しかし、首都がロンドンになるなど、イングランドを中心にした合体であったため、この合併法に反対するスコットランド人も少なくありませんでした。丁度そのころ、名誉革命で追放されたジェームズ2世を支持するグループがスコットランド・ハイランドで反乱を起こしました。これは1690年、1715年、1745年と、3回にわたりましたが、最終的には反乱は失敗して多くの死者をだしました。これがジャコバイトの乱と呼ばれる事件です。

スターリングの父親はジャコバイトの支持者で一度は投獄されています。スターリング自身もジャコバイトの支持者だったようです。彼はオックスフォードで学びましたが、イギリス王室への忠誠を拒否するなどの事件を起こしています。しかし、彼は奨学金を失ったものの、大学を追放されることはなく、ニュートンと親交を持ちながら、勉学を続け、この頃、ニュートン理論を支持する論文などを書いています。

1719年頃、スターリングはベニスに行き、そこでニコラス・ベルヌーイと親しくなりました。1722年、スコットランドに帰り、1724年、数学の教師として再度ロンドンに出かけています。そして1735年からスコットランドの鉱山会社の経営に携わり、1770年、エジンバラで死去しました。

彼がいつ頃スターリングの公式を発表したのか、いまだ研究中でよく判りませんが、ものの本によると、この公式の発見者はスターリングではなく、ド・モアブル( de Moivre 1667−1754)であるとのことでした。もしそうだとすると、このHPも書き直さなければならなくなります。モアブルの「級数と求積に関する論文」(1730年)に、いわゆるスターリングの公式が載っているとのことです。

どちらの発見にせよ、最初に発表された式は、 n!=(n/e)^n*√(2*pi*n) という形であったようです。これに { 1 + 1/12n + 1/288n^2 } を付け加えたのが誰なのか・・・、これについても研究中ですが・・・、現在はこの形で良く知られています。

つまり、
n! = (n/e)^n*√(2*pi*n) * { 1 + 1/12n + 1/288n^2 }
これがスターリングの公式と言われるものです。

最近はさらに厳密な数式が見つかっています。
「数学大公式集」(丸善株式会社)p937 によると、ガンマー関数の式として { 1 + 1/12n + 1/288n^2 - 139/51840n^3 - 571/2488320n^4 } が載っていました。

ネットにはもっと詳しい数字も載っていました。 http://www.lassp.cornell.edu/sethna/Cracks/Stirling.html
(z-1)! ~ (2 Pi / z)^'(1/2)*E^(-z) *z^(z) ( 1 +1/12 z^-1 +1/288 z^-2 - 139/51840 z^-3 - 571/2488320 z^-4 + 163879/209018880 z^-5 + 5246819/75246796800 z^-6 - 534703531/902961561600 z^-7 - 4483131259/86684309913600 z^-8 +...

スターリングの公式の項目を増やすことは階乗の公式を使えば簡単に出来ます。
n! = (n/e)^n * √(2*pi*n) * e^ { B(2)/2n + B(4)/12n^3 + B(6)/30n^5 + B(8)/56n^7 .... }
これを関数の変換公式に当てはめると、そのままスターリング公式が導けます。ベルヌーイ数はすでに計算済みですから、計算間違いさえしなければ、いくらでも詳しく求められると言うことです。もちろん、実際上は階乗の公式をそのまま使って計算した方が楽です。




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