大定理の誤証明事例集


フェルマー大定理は実に面白い定理です。というのは、素人的に考えて成功したと思える証明をいくつも見つけることが出来るからです。これが初めから出来そうにないときは魅力がありません。しかし、証明できるとなると俄然魅力が沸いてきます。大きな魚が釣れそうだと思うと、えさを立派にするのと同じです。

ところが、この魚は意地悪で、捕まえられそうな振りをするのですが、なかなか捕まってくれません。捕まえたと思って数日寝かせておくと、間違いであったことにやっと気が付くといった具合です。捕まえても、捕まえてもヌルりと逃げるウナギのようなものです。もしくは、媚を売る女に例えるといいかもしれません。

あまりに見事に失敗するので、その事例を記録しておこうという気になりました。皆さんの中にも失敗した事例があるなら教えてください。

もっとも、先のSさんの証明は失敗したとは思っていません。未完の証明ですから、ここには載せません。ここにあるのは、私がトライして、失敗したアイデアのうち、少しは成功したように見えるものです。初めからまったく見当違いであったものは除きました。



X+Y,XYに置き換えた事例(その1)

a,b,c,dへの置き換えは大変勉強になりました。そこで今度は、X+Y,XYに置き換えてみることにしました。

初めに、フェルマー式 X^(3)+Y^(3)=Z^(3) の共通因数を括り出して、Xを奇数、X,Yを互いに素になるように整理しておきます。すると、X,Zも互いに素になり、Y,Zも互いに素になります。

Xは奇数ですが、Yは奇数のときもあり、偶数のときもあります。Yが奇数ならZが偶数になり、Yが奇数ならZが偶数になります。

さて、ここで、X+Y=a,XY=bとします。n=3のとき、X^(3)+Y^(3)=Z^(3)ですから、これをa,bで表してみます。すると、Z^(3)=a^(3)-3abとなります。これはZ^(3)=a(a^(2)-3b)と書くことも出来ます。

この両辺をaで割ると、Z^(3)/a=a^(2)-3bとなり、Z^(3)/aを自然数にするためには、Z^(3)がaの倍数でなければならなくなります。次に、両辺をa^(2)-3bで割ると、Z^(3)/(a^(2)-3b)=aとなります。この左辺は、Zとaが「互いに素ではない」関係で、Zとbは互いに素の関係です。つまり、左辺を約すことが出来ず、自然数にならず、矛盾が生じます。

よって、この式を満たす自然数X,Y,Zは存在しないことが証明されたことになります。


感想

あまりにあっけなく、怪しい雰囲気も漂わないショウもない証明ですが、どこが間違っているかおわかりになりますか。




X+Y,XYに置き換えた事例(その2)

フェルマー式の、Xを奇数、X,Yを互いに素になるように整理しておきます。すると、X,Zも互いに素になり、Y,Zも互いに素になります。また、X+Y=a,XY=bとします。

n=3のとき、X^(3)+Y^(3)=Z^(3)ですから、これをa,bで表します。すると、Z^(3)=a^(3)-3abと書くことが出来ます。これを2・1式と名付けます。aで割ると、Z^(3)がaの倍数でなければならないことが判ります。

これを変形すると、a^(3)-Z^(3)=3abとなります。つまり、(a-Z)(a^(2)+aZ+Z^(2))=3abです。ここで、a,Zは公約数を持ちますので、a=pk,Z=qkと置き、代入・整理すると、k^(2)(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=3pbとなります。両辺をpで割ると、k^(2)がpの倍数であるべきとなり、両辺をk^(2)で割ると、pがk^(2)の倍数となります。これを成り立たせるp,kの関係はp=k^(2)しかありません。よって、(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=3bとなります。このとき、p-q=cとすると、c(c^(2)+3pq)=3bと書き換えることができます。

p=k^(2),Z=qkですから、3pq=3kZとなります。また、b=XYですから、c(c^(2)+3kZ)=3XYです。

ここで、cとc^(2)+3kZを比べてみると、cとkは互いに素です。Zはqkですから、p-qとは素になります。よって、cが3の倍数でないときは、cとc^(2)+3kZが互いに素になります。また、cが3の倍数の時は、c=3mとすると、mと3m^(2)+kZが素になります。どちらにせよ、c^(2)+3kZという式が現れ、これとX,Yが等しい、もしくは、3X,3Yと等しいとなるわけです。しかし、Z>Y,Z>Xですから、このような式は成り立ちません。よって、この式を成り立たせる自然数X,Y,Zは存在しないことが証明されました。

感想

これは結構正しそうに見えます。間違いを見つけるのに数日も掛かってしまいました。



事例(その3)

X+Y=aと置いて、X+Y>Zですから、X+Y=eZなるeが存在します。このeは1より大きい有理数です。さて、a^(3)=e^(3)Z^(3)で、a^(3)-Z^(3)=3abです。ゆえに、(e^(3)-1)Z^(3)=3abとなります。ここで、Z,3,a,bはすべて自然数ですから、e^(3)-1も自然数でなければなりません。すると、e^(3)も自然数となります。

a=eZのeが自然数ならば、aはZの倍数ということです。しかし、a^(3)-Z^(3)=3abの式からZ^(3)がaの倍数となっています。これは、a=Zを意味しています。しかし、これはX+Y>Zと矛盾します。よって、フェルマー式は成り立ちません。



事例(その4)

n=1,n=2のときのフェルマー式と比較することはとても大切です。

n=4の場合を考えてみます。X^(4)+Y^(4)=Z^(4)ですから、これを前提にして、abcd式を作ります。すると、(ac)^(4)+((ad-bc)/2)^(4)=((ad+bc)/2)^(4)となります。

A=X^(2),B=Y^(2),C=Z^(2)とすると、先のフェルマー式はA^(2)+B^(2)=C^(2)と書き直すことができます。ここでもabcd式を作ることができますが、先のn=4のときのabcdとは違いますので、a2,b2,c2,d2で表します。すると、n=2ですから、a2,c2は互いに素となり、A=a2c2,B=(a2d2-b2c2)/2,C=(a2d2+b2c2)/2と確定することができます。

X^(2)=A、しかも、a2,c2は互いに素ですから、a2,c2は必ず平方数であり、a1^(2)=a2,c1^(2)=c2なるa1,c1が必ず存在します。つまり、X=a1c1で、しかも、a1,c1は必ず素の関係にあります。

ところで、いっぽう、先のn=4のときに定めたabcd式によると、acが互いに素であるかどうかはっきりしていませんので、X=acと定めることができず、a=a1,c=c1とも決めることができません。しかし、もし、a,cが互いに素でないとすると、X=a1c1のところが素になりませんので、少なくとも、そのa,cの組み合わせではABC式が存在しなくなってしまいます。ゆえに、n=4のa,cも素になっていなければなりません。しかし、素であるとするなら、その続きは先の新証明が有効になり、X,Y,Zは存在しないことになります。


感想

途中で、煙に包まれたような論法がありますが、結構納得できます。みなさんはどうですか。



事例(その5)


X^(3)+Y^(3)=Z^(3)において、X+Y=a、XY=bとします。すると、a^(3)-3ab=Z^(3)となり、a^(3)-Z^(3)=3abとなります。両辺をaで割ると、Z^(3)/aが残ります。これはZ^(3)がaの倍数であることを示しています。

ここで、a=pk,Z=qkとすると、k^(3)(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=3pkbとなり、両辺をpkで割ると、k^(2)がpの倍数ということになり、k^(3)で割ると、pもしくは3pがk^(2)の倍数となります。そこで、k(2)=pu,p=k(2)vと置くと、uv=1となります。k(2)=pu,3p=k^(2)vの場合は、uv=3となり、k^(2)=pもしくは、k^(2)=3pとなります。

k^(2)=3pの分析は後にして、まずk^(2)=pのときを取り上げます。この場合、(p-q)(p^(2)+pq+q^(2)=3bとなります。p-q=cとすると、c(c^(2)+3pq)=3bで、cは3の倍数となります。すると、9m=3bとなりますので、bも3の倍数となります。b=XYですから、XかYが3の倍数となります。そこで、まずXを3の倍数ということにしておきます。Xが3の倍数とは、Y,Zは、Xと互いに素ですから、3の倍数にならないことを意味しています。

さて、X^(3)=(Z-Y)(Z^(2)+ZY+Y^(2))ですから、X=3(x1)、Z-Y=cとすると、27(x1)^(3)=c(c^(2)+3ZY)となります。c=3mですから、代入すると、3(x1)^(3)=m(3m^(2)+ZY)となります。ZYは3の倍数ではありませんから、mが3の倍数ということになります。つまり、cが9の倍数ということです。つまり、c=Z-Yですから、Z=9k+r,Y=9k+rと書くことが出来、9を基準に同型であることを示しています。

ところで、a^(3)-Z^(3)=3abで、b=3(x1)Yですから、aもZも9k+rとなり、9の倍数としては同型となります。つまり、a,Z,Yは同じタイプということです。ここで、X+Y=aですから、a,Yが9k+rとするなら、Xは必ず9の倍数であることを示しています。


さて、Xが9の倍数なら、X^(3)=729(x1)^(3)と書くことが出来、X^(3)=9m(81m^(2)+3ZY)から、mが27の倍数ということになり、cが27*9の倍数となります。これは27の倍数と考えることも出来ますので、ZとYは27について同型であることがわかります。また、a^(3)-Z^(3)=27a(x1)Yから、aとZも27について同型となります。ゆえに、X+Y=aのaとYが27k+rとなりますので、Xは27の倍数となります。

Xが27の倍数なら、また同じ作業で、Xを27*3の倍数であることを示すことが出来、その次には、Xががさらに大きい3の倍数でなであることを示すことが出来ます。この作業は無限に可能ですから、そのようなXが存在することは不可能です。ゆえに、Xなる数は存在しないことになります。


k^(2)=3pのときは、(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=bとなりますので、以上の分析は使えません。しかし、kが3の倍数とは、pも3の倍数であることを示しています。これはaが9の倍数であることになります。また、Z,pは3の倍数で、qは3の倍数ではないことになります。

さて、a^(3)-Z^(3)=3abですから、aが9の倍数とはZも9の倍数であることを示しています。Zが9の倍数とは、Z=qkですから、kが9の倍数ということになり、pは3の倍数で、a=pkですから、aが27の倍数ということになります。

aが27の倍数とは、Zが27の倍数となり、kが27の倍数となり、aが27*3の倍数となります。この作業は無限に続きますので、そのようなXが存在することは不可能です。よって、Xなる数は存在しないことが証明されました。

Xが存在しないとは、それに対応しているY,Zも存在しないことを示しています。


感想

モードについての基礎的な知識が欠けていましたので、このような証明になってしまいました。



事例(その6)


X^(3)+Y^(3)=Z^(3)において、X+Y=a、XY=bとします。すると、a^(3)-3ab=Z^(3)となり、a^(3)-Z^(3)=3abとなります。両辺をaで割ると、Z^(3)/aが残ります。これはZ^(3)がaの倍数であることを示しています。

ここで、a=pk,Z=qk (p,qは互いに素)とすると、k^(3)(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=3pkbとなり、両辺をpkで割ると、k^(2)がpの倍数ということになり、k^(3)で割ると、3pがk^(2)の倍数となります。そこで、k(2)=pu,3p=k(2)vと置くと、uv=3となり、k^(2)=pもしくは、k^(2)=3pとなります。

ここで、k^(2)=3pとなることはありません。なぜなら、以下のように、k^(2)=3pとすると矛盾が生じるからです。

k^(2)=3pならば、kが3の倍数となります。これは、pも3の倍数であることを示しています。a=pkですから、aが9の倍数となります。さて、a^(3)-Z^(3)=3abですから、(a-Z)((a-Z)^(2)+3aZ)=3abと変形することが出来ます。右辺は27の倍数になっています。これは左辺の(a-Z)が9の倍数であることを意味します。aが9の倍数で、a-Zが9の倍数ですから、Zも9の倍数となります。これは、Z=qkで、qはpと互いに素ですから、kが9の倍数ということになります。すると、a=pkから、aが27の倍数ということになります。

aが27の倍数とは、Zが27の倍数となり、kが27の倍数となり、aが27*3の倍数となります。この作業は無限に続きますので、そのようなXが存在することは不可能です。よって、Xなる数は存在しないことが証明できます。

つまり、k^(2)=pと確定することが出来るということです。これは、a=pkから、a=k^(3)を意味しています。a=X+Yですから、X+Yは必ず自然数kの3乗となっていることになります。


さて、X-Y=cとして同じ作業をすることができます。XY=bで、X^(3)-Y^(3)=W^(3)と定義します。この形では、w^(3)-c^(3)=3cbとなります。しかし、論法は同じです。c,Wは共約で、c=rl,W=slと置くことが出来ます。この場合、l^(2)=3rならば矛盾が生じますので、l^(2)=rと確定することが出来、c=l^(3)を導くことが出来ます。つまり、X-Y=l^(3)ということです。

さて、X^(3)+Y^(3)=Z^(3)より、(X+Y)(X^(2)-XY+Y^(2))=Z^(3)を得ます。Z=qkですから、Z^(3)=q^(3)k^(3)です。また、X+Y=aで、a=k^(3)ですから、(X^(2)-XY+Y^(2)=q^(3)ということです。同じことは、X^(3)-Y^(3)=W^(3)にも当てはまります。(X-Y)(X^(2)+XY+Y^(2))=W^(3)で、W^(3)=l^(3)s^(3)より、X^(2)+XY+Y^(2)=s^(3)となります。すると、s^(3)-q^(3)=2XYとなります。

非常に面白い現象ですが、p^(3)-q^(3)=3XYであり、s^(3)-q^(3)=2XYとなります。k^(2)=p,k^(3)=X+Yで、s=(X+Y)^(2)+XYです。つまり、p,sは互いに素であることになります。すると、p^(3)-q^(3)とs^(3)-q^(3)は互いに素であるはずです。ところが、互いに素であるべき数に、ともにXYという共通因子があることになっています。これは矛盾です。こういう矛盾が生じるのは、p,q,X,Yが自然数として存在していないことを示しています。


よって、その前提にあるX^(3)+Y^(3)=Z^(3)が成り立たないことが証明されました。



事例(その7)


X^(3)+Y^(3)=Z^(3)において、X+Y=a、XY=bとします。すると、a^(3)-3ab=Z^(3)となり、a^(3)-Z^(3)=3abとなります。両辺をaで割ると、Z^(3)/aが残ります。これはZ^(3)がaの倍数であることを示しています。

ここで、a=pk,Z=qk (p,qは互いに素)とすると、k^(3)(p-q)(p^(2)+pq+q^(2))=3pkbとなり、両辺をpkで割ると、k^(2)がpの倍数ということになり、k^(3)で割ると、3pがk^(2)の倍数となります。そこで、k(2)=pu,3p=k(2)vと置くと、uv=3となり、k^(2)=pもしくは、k^(2)=3pとなります。

ここで、k^(2)=3pとなることはありません。なぜなら、以下のように、k^(2)=3pとすると矛盾が生じるからです。

k^(2)=3pならば、kが3の倍数となります。これは、pも3の倍数であることを示しています。a=pkですから、aが9の倍数となります。さて、a^(3)-Z^(3)=3abですから、(a-Z)((a-Z)^(2)+3aZ)=3abと変形することが出来ます。右辺は27の倍数になっています。これは左辺の(a-Z)が9の倍数であることを意味します。aが9の倍数で、a-Zが9の倍数ですから、Zも9の倍数となります。これは、Z=qkで、qはpと互いに素ですから、kが9の倍数ということになります。すると、a=pkから、aが27の倍数ということになります。

aが27の倍数とは、Zが27の倍数となり、kが27の倍数となり、aが27*3の倍数となります。この作業は無限に続きますので、そのようなXが存在することは不可能です。よって、Xなる数は存在しないことが証明できます。

つまり、k^(2)=pと確定することが出来るということです。つまり、p^(3)-q^(3)=3bとなります。


さて、X-Y=cとして同じ作業をすることができます。XY=bで、X^(3)-Y^(3)=W^(3)と定義します。この形では、W^(3)-c^(3)=3cbとなります。しかし、論法は同じです。c,Wは共約で、c=rl,W=slと置くことが出来ます。この場合、l^(2)=3rならば矛盾が生じますので、l^(2)=rと確定することが出来、c=l^(3)を導くことが出来ます。つまり、s^(3)-r^(3)=3bです。

ここで、先に求めたp^(3)-q^(3)=3bと比較します。すると、pはsに、qはrに対応していて、同じ形の式になっていることが判ります。しかも、右辺は同じ3bです。しかも、pとsは等しくなく、qとrは等しくありません。このような式は成り立たないことは明らかです。よって、p,q,r,sという自然数は存在せず、その前提にあるX^(3)+Y^(3)=Z^(3)を成り立たせるX,Y,Zも存在しないことが証明されました。

さらに追加の説明を入れておくと、X^(3)-Y^(3)=W^(3)ですから、c(X^(2)+XY+Y^(2))=W^(3)です。c=l^(3)、W=slですから、X^(2)+XY+Y^(2)=s^(3)となります。p^(3)=a^(2)ですから、X^(2)+2XY+Y^(2)です。p^(3)-s^(3)=XYとなります。q^(3)=X^(2)-XY+Y^(2)ですが、r^(3)=l^(6)=(X-Y)^(2)=X^(2)-2XY+Y^(2)となります。q^(3)-r^(3)=XYです。よって、p,s間と、q,r間との差は同じですから、s=p-e,r=q-eと置いて代入します。すると、(p-e)^(3)-(q-e)^(3)=p^(3)-q^(3)-3e(p^(2)-q^(2))+3e^(3)(p-q)=3XYとなり、p^(3)-q^(3)=3XYを代入すると、3e(p-q)(e-p-q)=0となります。p-q>0ですし、e<pですから、e-p-q<0となって、0にはなりません。よって、e=0が証明されました。つまり、p=s,q=rとなります。しかし、それではXY=0となりますので、フェルマー式が成り立たないことが証明されました。



事例(その8)
この事例は凄いので、もう少し詳しく書きたいのですが、今は時間がないので、このまま短い証明のままにしておきます。考えれば考えるほど証明できているように見えるのですが、最後の最後にヌルリと逃げられてしまいました。これは単なる失敗事例ではなく、記録すべき失敗事例です。


X^(3)+Y^(3)=Z^(3)において、X+Y>Zですから、その差をfで表し、X+Y=Z+f とします。X=Z-Y+fですから、これをフェルマー式に代入すると、(Z-Y+f)^(3)+Y^(3)=Z^(3)から、f^(3)=3(Z-Y)(Y-f)(Z+f)を得ます。これは、(Y-f),(Z+f)ともにfの因数であることを意味しています。そして、(Y-f)も(Z+f)もfで割れるのですから、YもZもfの倍数でなければなりません。ところが、YとZは互いに素であると設定されていますので、最初の条件に反します。つまり、このことは、このようなY,Zが存在しないことを示しています。よって、n=3のときのフェルマー式を成り立たせるX,Y,Zが存在しないことが証明されました。

 f^(3)=3(X-f)(Y-f)(Z+f) でもあります。実に綺麗に並んでいますね。(X-f)はfと共約であると言うことになります。ということは、Xがfと共約であり、YもZもfと共約で、しかもX,Y,Zが互いに素ということです。こういうfがあるはずありません。


事例(その9)

フェルマー式でX,Yが存在するなら、X+Y=A,X-Y=BとなるA,Bが必ず存在します。X,YをA,Bで表現すると、X=(A+B)/2,Y=(A-B)/2ですから、これをフェルマー式に代入し、8を掛けると、
(A+B)^(3)+(A-B)^(3)=8Z^(3)となります。

左辺を展開して整理すると、A(A^(2)+3B^(2))=4Z^(3)となります。これはZが、Aと共約であり、Aの倍数であることを示しています。それゆえ、Z=Akとおいて代入すると、A(A^(2)+3B^(2))=4A^(3)K^(3)となり、両辺をAで割ると、A^(2)+3B^(2)=4A^(2)k^(3)となります。これはA,Bが共約であることを示しています。しかし、A,Bが共約であると、X,Yも共約となり、X,Yが互いに素であるという最初の前提と矛盾します。よって、このようなA,Bが存在しないことが証明されました。A,Bが存在しないと言うことは、X,Y,Zが存在しないことを示しています。


事例(その10) 06/02/14

X^3+Y^3=Z^3 [1式] のX,Y,Zが互いに素になるように最大公約数で割っておきます。

X+Y>Zですから、h=X+Y-Zとなる自然数hが存在します。このとき、Z=X+Y-hを[1式]に代入し、整理すると、h^3=3(X-h)(Y-h)(X+Y)を得ます。X+Y=Z+hですから、h^3=3(X-h)(Y-h)(Z+h)となります。

このとき、X,Y,Zは互いに素ですから、X-h,Y-hも互いに素です。なぜなら、もし互いに素でないとすると、その最小公約数k (k>1)はhの約数でもあるので、Xはkの倍数、Yもkの倍数となり、XとYが互いに素であるという最初の前提に矛盾するからです。同じように、X-hとZ+hも互いに素であることを証明でき、Y-h,Z+hも互いに素であることになります。

さて、hは3の倍数ですから、X,Y,Zのいずれかが3の倍数でなければなりません。ここで便宜上、Xを3の倍数としておきます。この時、X-h=h1^3/3となるh1が必ず存在します。Y-h=h2^3となるh2が存在します。Z+h=h3^3となるh3が存在します。それゆえ、h=h1*h2*h3であり、 X=h1*(h1^2/3+h2*h3), Y=h2*(h2^2+h1*h3), Z=h3*(h3^2-h1*h2) となります。

次に、X^3=Z^3-Y^3の右辺を因数分解し、X^3=(Z-Y)(Z^2+ZY+Y^2)の(Z-Y)と(Z^2+ZY+Y^2)は互いに素の関係にあることを確認します。なぜなら、Z^2+ZY+Y^2=(Z-Y)^2+3ZYであり、(Z-Y)とZYは互いに素だからです。それゆえ、Z-Yは何かの数の3累乗になっていなければならず、これをfとすると、(Z-Y)=f^3となります。ところが、Z-Y=X-hでもあり、X-h=h1^3/3ですから、f^3=h1^3/3となり、これを成り立たせるfは存在しません。Yが3の倍数であっても、同じ論法で矛盾が生じます。また、Zが3の倍数の時、Z^3=(X+Y)(X^2-XY+Y^2)という式を使うと、X+Y=Z+hですから、X+Y=f^3とすると、f^3=h3^3/3となり、同じ理由で、fが存在しないことになります。fが存在しないと言うことは、h1,h2,h3が存在しないことであり、その前提であるX,Y,Zが存在しないことを示しています。ゆえに、フェルマー大定理(n=3の時)は証明されました。

<間違いの説明>
時間がたつと、自分でもどこが間違いか判らなくなるので、理解している内にどこが違っているかを書いておきます。
(Z-Y) と (Z-Y)^2+3ZY は素ではありません。なぜなら、Z-Y=X-hで3の倍数であり、(Z-Y)^2+3ZY も3の倍数だからです。ゆえに、Z-Y=f^3であることもありますが、Z-Y=f^3/3である可能性もあります。事実、この場合は、X-hですから、h1^3/3と確定できるので、議論の余地はありません。これでは矛盾は生じませんから、証明は失敗しました。

それにしても、相変わらずX^3=(Z-Y)(Z^2+ZY+Y^2)の式は凄いので、その続きも書いておきます。証明には関係ありませんが、成り立つはずのない式がどんどん出てきます。

Yを3の倍数ではないとして、Y^3=(Z-X)(Z^2+ZX+X^2)を調べると、Z-X=Y-h=h2^3となります。Y^3=h2^2(Z^2+ZX+X^3)なので、Y^3=h2^3(h2^6+3ZX)となり、Y=h2(h2^2-h1h3)を代入すると、h2^3が消えて、(h2^2+h1*h3)=h2^6+3ZXとなります。Z=h3(h3^2-h1*h2), X=h1(h1^2/3+h2*h3)を代入して整理すると、6h1*h2*h3 = 3h3^3-3h2^3-h1^3が得られます。これは、6h = 3h3^3-3h2^3-h1^3のことです。h1は3の倍数という約束で、h2が3の倍数なら、h1が3h1^3となります。自らの因数の3塁乗数を足したり引いたりして自分自身になれるとは、驚きです。

先のa, b, c, d との関係も何か解明できるのではと思い、比較していました。すると、驚いたことに見事に関係して、a, b, c, d の実態が判りやすく表示できるようになりました。

(Z-Y)/X=b/a ですが、(Z-Y)=(X-h)ですから、Xが3の倍数の時はh1^3/3となります。X=h1*(h1^2/3+h2*h3)ですから、b=h1^2/3, a=h1^2/3+h2*h3 となり、a, b は互いに素という条件も満たしています。
(Z+Y)/X=d/c ですが、これはそのまま代入して整理するしかありません。それでも d=h3^3+h2^3 という綺麗な式が出てきました。c=h1*(h1^3/3+h2*h3) で、d, c がこの段階で互いに素であるかどうか判りません。
しかし、「a, c が互いに素でない」という条件で分析したとき、c=ak という結論が出ているので、c=h1*(h1^3/3+h2*h3) しか可能性はありません。このとき、k=h1 となり、b=k^2となっていましたが、それだとb=h1^2となります。しかし、先ほどb=h1^2/3という結論が出ているので、再検討したところ、やはり b=h1^2/3 が正しいと判りました。Xが3の倍数でないときは b=h1^2 となります。dの式も先に書いたとおりであり、c, d が互いに素であるかどうか、h1,h2,h3の分析からは明らかではありませんが、a,b,c,d の分析からはそうなります。これで、以前に書いた式が正しいことが判りましたが、一部修正点も見つけることが出来ました。たとえば、n=3で、Xが3の倍数の時、4a^3=3d^2+b^3 ではなく、4a^3=d^2+b^3 となります。このように書き直さなければなりません。また、Z-Y=f^3などの表現を使いましたが、厳密には、Xが3の倍数のとき、f^3/3となります。そのことも知っておかなければなりません。



フェルマー式の正しい特徴も記録しておきます。

間違いばかりを集めても面白くないので、今度はフェルマー式の理解に役立ちそうな正しい事例を集めてみます。直接証明にはつながらなくても、フェルマー式がいかに面白い式であるかが見えてきます。

n=3のとき、Z^(3)は必ず3以上の相異なる自然数z1,z2の立方数の積で表すことができます。つまり、Z=(z1)(z2)ということです。これはZが素数ではフェルマー式が成り立たないことを示しています。

その理由は、X^(3)+Y^(3)=Z^(3)において、左辺を因数分解します。すると、(X+Y)(X^(2)-XY+Y^(2))=Z^(3)となります。ここで、X+Y=A,(X^(2)-XY+Y^(2))=Bとすると、AB=Z^(3)となり、AとBは互いに素ですから、必ずA,Bは立方数でなければなりません。そこで、A=z1^(3),B=z2^(3)とするとZ=(z1)(z2)となります。

同じことは、X,Yについても言えますが、Zの場合と異なり、Z-Yが1になることもあるので、必ずと言うわけではありません。Z-Y=1以外のときは、二つの数の積になるということです。

Xについては、X^(3)=Z^(3)-Y^(3)と置いて、X^(3)=(Z-Y)(Z^(2)+ZY+Y^(2))とします。ここで、(Z-Y)と(Z^(2)+ZY+Y^(2))は、Xが3の倍数でないときは、互いに素ですから、(Z-Y)=x1^(3),(Z^(2)+ZY+Y^(2)=x2^(3)なるx1,x2が必ず存在し、X=(x1)(x2)と書くことができます。3の倍数の時は (Z-Y)=x1^(3)/3, (Z^(2)+ZY+Y^(2)=3*x2^(3) なる x1, x2が必ず存在し、X=(x1)(x2)と書くことが出来ます。

Yについても同様のことが言えます。



n=1のときでも、abcd式が有効であることは面白い現象です。

n=1とは、X+Y=Zであり、これを満たすX,Y,Zはたくさん存在しています。このX,Y,Zを使って、a,b,c,dを定義して、abcd式に代入すると、ちゃんと成り立ちます。当たり前ではありますが、面白いことです。

(ac)+(ad-bc)/2=(ad+bc)/2ということですから、これをそのまま計算すると、a=b=1となります。Z-Y=Xが成り立てばいいと良いということですが、これはそのまま、X+Y=Zということですから、当たり前です。

a=1ですから、cが何であれ、a,cは必ず互いに素となります。

この条件は、nが何であれ、A=X^(3),B=Y^(3),C=Z^(3) と置けば、A+B=Cとなり、n=1のフェルマー式となるので、a=b=1でなければなりません。この条件を使うと、n次におけるフェルマー式のa,b,c,dを少し整理することが出来ます。


n=2のときもabcd式は有効です。n=2を代入して計算すると、ac=bdとなり、これを成り立たせるabcdは必ずフェルマー式を成り立たせます。

n=2では、a,cが互いに素になっていることを証明しておきます。a=pk,c=qkと置くと、k^(2)pq=bdとなります。両辺をkで割ると、kpq=bd/kとなります。ここで、b,kが素、d,kも素ですから、k=1となり、a,cは互いに素となります。

さて、X^(2)+Y^(2)=Z^(2)において、X+Y=a,XY=bとすると、a^(2)-2b=Z^(2)となります。ここで、a^(2)-Z^(2)=2bとなり、(a-Z)(a+Z)=2bです。a-Zは偶数、a+Zも偶数ですから、bは偶数となり、Xは奇数と決められていますから、Yは必ず偶数となります。たしかに、ピタゴラス数をみてみると、X,Yは必ず奇数と偶数になっていて、Zはすべて奇数です。

そもそも、存在しない数が存在すると仮定して議論するのですから、何でもありの世界になって良いはずですが、X^3+Y^3=Z^3の世界はなかなかボロを出さないと言うか・・・、結構秩序があるので、面白いですね。


X^n-Y^n=Z^n

それから、たいした問題ではありませんが、X^n+Y^n=Z^nなるフェルマー式を成り立たせるX,Y,Zが存在するなら、X^n-Y^n=Z^nを成り立たせるX,Y,Zも存在することになります。なぜなら、最初のフェルマー式のX,Y,Zをそのまま使って、Z^n-Y^n=X^nとなるからです。つまり同じ問題なのです。


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