フェルマー大定理の新証明

(2005/07/05) 小さな訂正
証明第2部での表現に問題のある箇所を見つけたので、修正したいのですが、すでに保存版となっているので、別途ここに修正した文章を載せておきます。別に証明の本筋に影響を与えるものではありません。

(2002/12/5 修正・訂正版        Yahoo掲示板で検証していただきたことを感謝します。その結果、修正・訂正の必要性を教えられました。しかし、実は微妙な点がありまして、修正・訂正をどのように受け入れるか、いろいろ迷いました。とりあえず、今までの証明は、そのまま記録として残しておくことにしました。修正・訂正したあとの証明は結果的に成功しませんでしたが、何かの参考にと思い、以前の証明のあとに追加する形に載せておきました。修正前の証明については、問題があることは理解できましたが、非常に面白い証明の試みであることには変わりありません。これを失敗と見るのは的はずれです。これはフェルマー定理証明を試みる人すべてが知っておくべきやり方であり、これで半分は証明できたのですから、大成功だったと言えます。この修正前の証明がいかに面白いかと言うことについては、別ページにて説明することにしましたので、こちらについてのご意見・ご批判も歓迎します。)



新証明の修正・訂正についての感想

HPに掲載後、Yahoo掲示板で証明の検証を呼びかけたところ、多くの方(数人)が参加してくださり、見事一週間で新証明の訂正に追い込まれました。意外とあっさりと論破されてしまった感じです。さすが、数学愛好家たちは鋭いと感心した次第です。修正点は、第2部に集中しています。というか、一箇所だけです。つまり、acと(ad-bc)/2が互いに素であるという条件を付けることが問題だと言うことです。そこで、そこを修正した上での証明にトライしようと一度は決意しました。

しかし、この証明を教えてくれたSさんの意見を聞いて見ると、彼の意見にも耳を傾けるところがあり、修正・訂正はまだ早いのではないかという気がしてきました。Yahoo掲示板の方々の批判はもっともだと思うのですが、しかし、Sさんの論法にもなるほどと思うところがあります。両者を調和させることは非常に難しいように思います。そこで、両方ともHPに載せておいて、関心のある方々のご意見を伺おうという結論になりました。

前の証明はそのまま保存することにして、それについての説明は別ページに載せることにしました。修正後の証明は結局うまくいきませんでしたが、その結果も無意味ではないと思うので、このページの保存版のあとに続きを載せておきます

修正しない方向での論証


以前の新証明をそのまま保存しています

一部、修正を迫られたのですが、どのように修正してよいか決心がつきませんでしたので、以前のものをそのまま載せておきます。というのは、この証明のやり方が私にはとても勉強になったからです。ここでは、「互いに素」とか、「共約」、「既約」などの自然数論の基本概念だけが使われていますので、初心者にとって、理解するのにそれほど難しいところはありません。これからフェルマーの大定理を学ぼうとする人にとっては腕試しとなるのではないでしょうか。


以下、保存版です

(2002/11/12 訂正版        Yahoo掲示板の皆様のご指摘により、数箇所、書き間違いや不適切な個所を訂正させていただきました。ご指摘を感謝いたします。)



昔、最初にフェルマーの大定理を学んだとき、教師が「誰かこれを証明できるやつはいるか?」と言ったのですが、私は「証明できない定理もあるのではないか」と心の中で思いました。「すべての定理が証明できるわけではないだろう」と思ったのです。ところが、私の直感は見事に外れてしまいました。1995年、ワイルズという学者がこれを証明したのです。本当に驚きました。すごいことです。20世紀の快挙と言えるでしょう。私は、それを喜んで、私のHPにその感想を書き込んだわけです。

ところが、今年の春頃(2002年)Sさんが私のHPを見て、「この人は付き合いがいい」と思ったのでしょうか、私にメールをくださったのです。そして、ご自分が長年にわたり研究してこられ、完成させられたフェルマーの大定理の証明を私に見せてくださいました。最初、その証明を見たとき、「こんな短い論証で、あのフェルマーの大定理が証明されているだろうか?」と疑問に感じたのですが、読んでみると思ったよりしっかりした論理構成になっていました。細部の論証にはよく判らないところがあったので、Sさんに質問したところ、丁寧に説明してくれました。そこで、さらに詳しく検討したのですが、どうも私の頭では証明されているように見えてきたので困ってしまったわけです。なぜなら、一介の (失礼な言い方で申し訳ありません) 数学の愛好家がフェルマーの大定理を証明できるなんて、考えられないことです。しかもこんなに簡単に・・・。しかし、私の検討してところでは、間違ったところは見つかりませんでした。これはもしかすると、もしかするぞと思ったわけです。

自分一人で納得していても仕方ありませんので、Sさんにその証明を公表して、多くの人に検証して貰うことをお奨めしたのですが、すべて私に委ねるとのことでしたので、私がSさんになりかわってそれをこのホームページで公表することになりました。

この証明が証明として完成しているかどうか、みなさまのご意見、ご批判を承りたいと考えています。

今考えるとワイルズの証明は、無意味に難し過ぎると思います。その証明の難解なること、何回考えても、「これはなんかいな」と思うばかりの難しいさです。しかし、今回、Sさんによりなされた証明は、高校生でも理解できるレベルの論理だけで出来上がっています。これこそ本来の証明ではないかと思うのですが、みなさんはどう感じられますか。それでは、順番に新しい証明をご説明していきます。

なお、ここに書いた証明は、Sさんの証明を私なりに理解して纏めたものです。アイデアはSさんのものですが、敷衍して証明を説明している部分は私の文章です。判りやすく説明しようと工夫を凝らしたつもりです。それがありがた迷惑とならないことを祈ります。(間違いがあるとするなら、それはおそらく私の付け足した部分でしょう。)



フェルマーの大定理とは、X、Y、Z、nを自然数としたとき、n>2の時、
X^(n)+Y^(n)=Z^(n)
を満たすX、Y、Zは存在しないという命題です。

ここで、表記方法の確認をしておきます。ホームページで数式を表現する場合、しばしばどこまでが指数であるかがわかりにくくなりますので、指数部分は^(n) のように^記号と括弧で括ることにします。3の2乗は 3^(2) となります。AかけるBの結果をC乗するは、(AB)^(C) となります。Xのn乗がX^(n)となるということです。以下同様ですので、ご了解ください。掛け算は、abなどのように無記号ですが、時にa*bなどのように、*記号を使うこともあります。




証明の全体構造

まず、証明の全体構造を説明しておきます。この証明は前提、1部、2部、3部と分かれていて、前提では証明で使う概念などを解説してあります。これは証明の本体ではありませんが、数学に慣れていない人にとっては必要だろうと思って付け加えてあります。第1部で、XYZ式をabcd式に変換します。第2部で、abcd式の条件を検討します。第3部で、これがn=3、n=4、その他の場合でどうなるかを検討します。最終的には、abcd式を成り立たせるa、b、c、dが存在しないことを証明することにより、X、Y、Zが存在しないことになるという論理です。はたして、証明は成功しているでしょうか。冷静な気持ちでご検討ください。


      推測と証明の違い

さて、フェルマーの式、つまり、X^(n)+Y^(n)=Z^(n) が、n>2のとき、これを満たす自然数X、Y、Zが存在しないことを証明すればいいわけですが、n=2 のときが、いわゆるピタゴラスの定理です。これを満たす自然数解は、3、4、5とか、5、12、13とか、21、20、29など、すでに数多く見つかっています。n=3のときに成り立つ自然数解もありそうに感じますが、これを探してみると、なかなか見つかりません。n=4のときも同じです。どうも、nが3以上のときは解が無いのではないかとは誰でも推測できます。コンピュータで探した人がいたそうですが、それでも見つからなかったそうです。

しかし、推測と証明は異なります。どんなに多くの人が同じ推測をしても、また、たとえそれが正しい推測であったとしても、証明できるかどうかはまた別の話しです。つまり、公理と言われるものから論理的演繹によって結論まで導かれることを示すのが証明です。フェルマーの大定理も、「そうであるらしい」ではなく、正しいと見なすことの出来る公理から演繹して見せなければならないのです。

そこで、多くの人がトライして、多くの人が失敗しました。私も昔やってみましたが、数10分考えて、あきらめました。 (^^)笑  生涯懸けてやった人も沢山いるそうですから、尊敬してしまいます。たとえ、その証明が不成功だったとしても、その情熱は素晴らしいと言えるのではないでしょうか。


      Sさんの証明に使う公理と定理

証明というのは、常に公理から出発します。Sさんの証明の出発点は、「自然数と自然数を足すと自然数になる」というものです。どうでしょうか。これを公理と思わない人は、この場から立ち去ってください。(冗談です。・・・)

その続きですが、「奇数と奇数を足すと偶数になる」はいいでしょうか。「偶数と偶数を足すと偶数になる」も当然ですね。その他、「偶数と奇数を足すと奇数になる」など、いろいろな定理がありますが、これらは、当然であり、また証明もそれほど難しくありませんので、ここでは適宜、定理として使わせていただきます。

では、nを自然数とすると、「偶数のn乗は偶数である」はどうでしょうか。これも認められます。「奇数のn乗は奇数である」もいいですね。3の2乗は9、3乗は27、4乗は81ですから、すべて奇数です。定理として承認しましょう。その他、「Xが偶数のとき、X/2は自然数である。」とか、「Xが奇数のとき、X/2は自然数でない。」などもありますが、これらも当たり前です。

「Xとnが自然数のとき、Xのn乗は自然数である」はいいとして、「Xが自然数でなく、nが自然数であるとき、Xのn乗は自然数ではない」はどうでしょうか。これは公理と言うより、・・・間違いですね。失礼しました。(笑)少し表現を変えます。「nが自然数で、Xが自然数でない有理数であるとき、Xのn乗は自然数ではない」という命題があります。これは証明できますが、フェルマーの大定理の証明には使いませんでしたので、証明は割愛します。

フェルマーの大定理を成り立たせるX、Y、Zが存在するなら、X+Y>Zであることは当然ですね。(X+Y)^(n)の展開式とX^(n)+Y^(n)=Z^(n)を使うと導けます。ですから、Z-Y<Xとなります。また、Z+Y>Xも当然のことですから、認められます。

「X=pk (p、kは自然数)で、XとYが互いに素のとき、pとY、kとYも互いに素である」という論理もしばしば使います。これを前提にすると、XとYが互いに素のとき、Xのすべての因数とYのすべての因数が互いに素であることが判ります。「X、Yが互いに素のとき、X/Yは、Y=1でなければ自然数にはならない」もよく使う論理です。

「XとZ、YとZが互いに素のとき、(XY)とZは互いに素である。」とう命題も以下で使います。これは公理なのかもしれませんが、一応説明しておくと、X、Zが互いに素であるとは、共通の因数を持たないということです。YもZと共通因数を持たないわけですから、(XY)とZは共通因数を持ちません。つまりは互いに素であるということです。


      「互いに素である」とは

互いに素であるという概念は、この証明の基本ですので、ここで説明しておきます。ただし、私自身、数論を専門に勉強したわけではありませんので、概念規定については思わぬ誤解があるかもしれません。説明に間違いがあるならご指摘ください。(ここではマイナスの数は考察の対象から外してあります。)

「互いに素である」とは、二つの数が約せないことを意味しています。たとえば、12と8には4という共約数があります。このような共約数を持つ数は、互いに素ではありません。15と11とか、9と5などは約せませんので、「互いに素である」ことになるわけです。ここで気と付けるべきことは、1と3とか、1と7などのような場合、1で約せるとも言いたくなりますが、1で約せない数はありませんから、1以外の数で約せるかどうかということであるのは当然のことです。また、7と7の場合のように同じ数のときは、1以外に7という共約数を持ちますので、互いに素の関係ではなくなります。

以上を整理しますと、XとYが互いに素でないとき、つまり共約数を持つとき、X=a*k、Y=b*kと書くことのできる自然数a、b、kが存在することを示しています。(aとbは互いに素の関係、kは1以外の自然数)

1と1が互いに素の関係であることは、わかりにくいので注意が必要です。3と3は1以外に3という共約数を持ちますので、互いに素ではありませんが、1と1は1以外に共約数を持ちませんから互いに素の関係になるという理屈です。また、1と3や、1と7などのように、1と対比する場合はどの数も互いに素の関係になります。


      背理法とは

背理法は、ここでは非常に頻繁に使われます。もし理解できていない人がいるなら、この証明はわかりにくいものになるでしょうから、少しだけ説明しておきます。背理法は数学で使う証明の中ではきわめて有力な手段であって、多くの証明に顔を出します。慣れていない人が戸惑うのは、論理が一度逆転して、反対のことを証明しているかのように見える記述が続くことです。背理法とは、その名称のごとく、反対の命題を証明する過程で、結論が背理となることを示すことで、最初の命題を証明するという論法を取っています。それゆえ、確かに一見わかりにくい記述になります。しかし、これはやむをえないことですので、なんとか慣れていただけないでしょうか。

背理法については、私のホームページの「数学の面白さ」第一ページの真中あたりで解説していますので、背理法について自信のない人は、参考までに読んでいただけると幸いです。そこでは√2が無理数であることを背理法を使って証明するやり方を紹介しておきました。これは古典的証明なのですが、実に見事なもので、私はこれを習ったとき感激してしまいました。




証明の第1部

      第1式 (XとYは互いに素)

さて、X^(n)+Y^(n)=Z^(n)において、XとYが互いに素でないとき、つまり共約数を持つとき、Zも互いに素ではなくなりますので、両辺を共約数で割って、XとYを互いに素の関係になるように前もってしておきます。

そして、XとYが互いに素であるとするなら、XとZも互いに素になります。なぜなら、X、Zを互いに素でないとすると矛盾が生じるからです。というわけで、まず背理法を使って証明してみましょう。

XとZが素でないと仮定することは、X=a*k、Z=b*kとなるa、b、k(aとbは互いに素 、k>1)が存在することになります。それを、Y^(n)=Z^(n)-X^(n)に代入して、整理するとY^(n)=(b^(n)-a^(n))*k^(n)となります。ここで、(b^(n)-a^(n))は自然数ですからpと置き直してみましょう。Y^(n)=p*k^(n)となります。この場合、XとYが互いに素ですから、(Y/k)^(n)=pと変形したとき、Y/kが自然数にならず、自然数pと等しくなることは矛盾です。つまり、この矛盾は仮定したXとZが素ではないという命題が間違っていることを示しています。よって、XとZは互いに素であることが証明されました。

同じようにして、XとYが素であるなら、YとZも素になることを証明することが出来ます。

以上のことを踏まえて先へ進むことにしましょう。


      Xは奇数に限定

X、Yが互いに素であって、X^(n)+Y^(n)=Z^(n) を成り立たせるX、Y、Zが存在するとするなら、XかYのいずれかは、必ず奇数になります。なぜなら、偶数と偶数の組み合わせは、互いに2という約数を持つことになりますので、互いに素ではなくなるからです。どちらかが奇数のとき、これをX^(n)+Y^(n)=Z^(n) と書いても、Y^(n)+X^(n)=Z^(n) と書いても同じことですから、奇数を前に書くことにして、Xを奇数に限定します。

この場合、XもX^(n)も奇数と言うことです。Yが奇数のとき、Y^(n)も奇数となり、Zも、Z^(n)も偶数になります。Yが偶数のとき、Y^(n)は偶数となり、Zと、Z^(n)は奇数となります。ZとYのどちらかが奇数で、他方が偶数ですから、(Z+Y)と(Z-Y)は、どちらも奇数となります。

ここで出来た式を第1式とします。


      第2式

次に、X^(n)+Y^(n)=Z^(n) の両辺をX^(n)で割ります。すると、1+Y^(n)/X^(n)=Z^(n)/X^(n) となり、変形すると、1+(Y/X)^(n)=(Z/X)^(n) となります。これを第2式と名付けます。


      第3式

ここに、Y/X=((Z+Y)/X-(Z-Y)/X)/2 と Z/X=((Z+Y)/X+(Z-Y)/X)/2 という式があります。両者を第3式と名付けましょう。この式を見つけたことがSさんの凄いところです。

この式は、右辺を整理すると左辺になるように、単に書き換えただけのものですから、あらゆるX、Y、Zに対して成り立ちます。この式を先ほどの第2式に代入します。しかし、なぜこの式なのか、その意図はこの段階では見えてきません。初めは、当惑しますが、深く考えないでください。その威力はまもなく明らかになります。


      第4式

第3式を第2式に代入して、整理すると第4式になります。

1+((Z+Y)/X-(Z-Y)/X)/2)^(n)=((Z+Y)/X+(Z-Y)/X)/2)^(n)

これが第1式を単に書き直しただけのものであることはおわかりいただけると思います。


      第5式

さて、次に第4式に登場する(Z-Y)/Xを分析します。まず、(Z-Y)/Xの分母、分子を公約数で割って既約分数にして、これをa、bという互いに素である自然数で表現します。つまり、(Z-Y)/X=b/aとなります。(Z+Y)/Xも同様に、互いに素であるc、dという自然数で表現します。つまり、(Z+Y)/X=d/cとなります。この場合、(Z-Y)もXも奇数であることはすでに述べていますので、aとbともに奇数です。また、(Z+Y)とXも奇数ですから、同様にcとdは奇数となります。

これを第4式に代入します。すると、1+((d/c-b/a)/2)^(n)=((d/c+b/a)/2)^(n)となります。これを変形させて、
(ac)^(n)+((ad-bc)/2)^(n)=((ad+bc)/2)^(n)
という形を導きます。これを第5式と名付けます。

すると、最初の(ac)は奇数となります。また、ad、bcは奇数ですから、ad-bcとad+bcは共に偶数となります。偶数ですから、(ad-bc)/2、(ad+bc)/2は必ず割り切れて自然数となります。




証明の第2部


ここまでの証明は納得できたのでしょうか。第1式から第5式まで、ただ文字を入れ替えて整理しただけですから、難しい点はありません。ただ、a、b、c、dに条件が付いていますので、その点に注意が必要です。

      a、bの関係は?c、dは?

さて、これ以降の証明を判りやすくするため、再度いくつかの公理・定理を確認しておきたいと思います。

X+Y>Zですから、X>(Z-Y)となります。ここで両辺をXで割ると、1>(Z-Y)/Xとなります。右辺はb/aと定義しましたので、1>b/a、つまりa>bということです。ここで、aとbは自然数ですから、「もし、a>bで、かつa=1ならば、自然数bは存在しない」という結論になります。これはあとでしばしば使うことになります。

また、(Z+Y)/Xについては、以下のことが確認できます。Z>Xですから、(Z+Y)>Xであるのは明らかです。両辺をXで割ると(Z+Y)/X>1となります。ここで、先に定義したように(Z+Y)/X=d/cですから、d/c>1となり、d>cとなります。dとcは自然数ですから、cが1以下にはなりえません。ということは、dは1にはなりません。

      Xとacの関係は?

さて、第1式と第5式を比較すると、同じA^(n)+B^(n)=C^(c)の形になっていて、第1式を変形して第5式が出来たのですから、XとAが対応し、YがBに、ZがCに対応しているように見えます。しかし、第5式は、(2ac)^(n)+(ad-bc)^(n)=(ad+bc)^(n)と書き直すことも出来ますので、A部分がacと確定しているわけではありません。そこで、第5式を第1式との対応関係を確認しておきます。

第1式の条件は、Xが奇数、XとYが互いに素であることでした。第5式のacは奇数です。もうひとつの「 (ac)と(ad-bc)/2が互いに素である」という条件は第5式では明らかではありません。しかし、(ac)と(ad-bc)/2が互いに素でないときは、第5式が第1式と対応しませんので、分析する必要がありません。XとYが素であるときに、それを成り立たせるX、Y、Zが存在しないことを証明するのですから、XとYが素でない時を検討する必要はないはずです。そこで、第5式に、「(ac)と(ad-bc)/2が互いに素である」という条件をつけて、第1式と対応するようにします。

      ふたつの条件(第5式と条件)

つまり、n>2のとき、
(ac)^(n)+((ad-bc)/2)^(n)=((ad+bc)/2)^(n)、かつ、
(ac)と(ad-bc)/2が互いに素
というふたつの条件を成り立たせる自然数、a、b、c、dが存在しないことを証明すれば、X、Y、Zも存在しないことの証明になるということです。

      aとcは互いに素である

さて、以上の条件を前提にすると、aとcが互いに素であるを証明することが出来ます。

aとcが互いに素でないと仮定すると、a=jp、c=jqとなる自然数p、q、j (j>1) が存在することになります。ここで、aとcは奇数ですから、p、q、jも奇数であることをご注意ください。さて、これを(ad-bc)/2の式に代入します。すると、j(pd-bq)/2となり、jは奇数ですから2で割れません。すると、acと(ad-bc)/2はjという共約数を持ち、互いに素であるという条件に矛盾します。よって、aとcは互いに素であることが証明されました。

      X、Y、Zとa、b、c、dの対応関係

さて、a、b、c、dの定義式を変形・整理すると、Y=X*(ad-bc)/(2ac)、Z=X*(ad+bc)/(2ac)という式を得ます。ここで、「(ad-bc)/2とac」だけでなく、「(ad+bc)/2とac」も互いに素であることにご注意ください。a、cが互い素であることから、(ad+bc)/2とaが互いに素となり、(ad+bc)/2とcも互いに素となりますので、(ad+bc)/2とacが互いに素となるわけです。(同種の証明がn=4のところにありますので、そちらを参照してください。)

次に、Y=(X/ac)*(ad-bc)/2に注目します。前提からacと(ad-bc)/2は互いに素ですから、割ることは出来ません。(ad-bc)は偶数ですから2で割り切れ、自然数となります。Yも自然数です。すると、X/acが自然数にならなければなりません。そこで、X/ac=kとおきます。つまり、X=kacということです。これをY式、Z式に代入します。すると、Y=k*(ad-bc)/2、Z=k*(ad+bc)/2という式になります。ここで、YとZが互いに素であることから、(ad-bc)/2と(ad+bc)/2が互いに素であることがわかります。前者をp、後者をqと置きますと、Y=k*p、Z=k*qとなります。これは、k=1以外の場合には、YとZが素にならないことを示しています。よって、k=1が確定します。k=1ですから、X=ac、Y=(ad-bc)/2、Z=(ad+bc)/2となります。




証明の第3部

どうでしょうか。ここまではご理解いただけたでしょうか。それでは次に進みましょう。

      n=3 の場合

n=3の場合、第5式に代入して展開・整理すると、4(ac)^(3)=3(ad)^(2)bc+(bc)^(3) となります。これを第6式とします。ここで、両辺をaで割ります。すると、4c*(ac)^(2)=3abc*(d)^(2)+(bc)^(3)/a となります。4c*(ac)^(2)は自然数です。3abc*(d)^(2)も自然数です。ですから、もう一つの項も自然数でなければなりません。

さて、(bc)^(3)/aについて調べてみましょう。aとbは互いに素、aとcは互いに素ですから、a=1以外の時には割り切れず、自然数になりません。しかし、a=1ですと、a>bを成り立たせる自然数bが存在しないことになり、矛盾が生じます。

よって、n=3のとき、第6式を成り立たせるa、b、c、dは存在しないことが証明されました。


      nが3を超える奇数の場合

同じように、nが5以上の奇数のとき、第5式に代入して展開すると、最後に必ず(bc)^(n)の項目が現れます。ここでも、同じように、両辺をaで割って、最後の項目だけに分母のaが残ることを確認し、互いに素の関係を利用してa=1以外では割り切れないことを示すことが出来ます。a=1であるとすると、a>bを成り立たせるbが存在しませんので、ふたつの条件(第5式と条件)を満たす自然数a、b、c、dの組み合わせは存在しないことになります。


      n=4の場合

n=4の場合、第5式に代入して展開・整理すると、2*(ac)^(3)=bd(ad)^(2)+bd(bc)^(2) となります。これを第7式とします。この両辺をbd(ac)^(3)で割ると、2/bd=((ad)^(2)+(bc)^(2))/(ac)^(3)となります。bdは奇数ですから、左辺は既約分数になります。

右辺は、aと(ad)^(2)+(bc)^(2)と、cと(ad)^(2)+(bc)^(2)に分けて考えます。aと(ad)^(2)+(bc)^(2)は、両者を互いに素ではないと仮定すると矛盾が生じます。つまり、a=kpと(ad)^(2)+(bc)^(2)=kqとなるp、q、k (k>1)が存在すると仮定すると、a=kpを代入して、(kpd)^(2)+(bc)^(2)=kqを得ます。両辺をkで割ると、k(pd)^(2)+(bc)^(2)/k=qとなります。ここで、右辺は自然数、左辺第1項も自然数ですが、第2項(bc)^(2)/kは、aとb、aとcが互いに素であるわけですから、aの約数のkもb、cと互いに素の関係にあり、しかもk>1ですから、割り切れず、自然数にならず、矛盾が生じます。よって、aと(ad)^(2)+(bc)^(2)は互いに素であることが証明できました。

cと(ad)^(2)+(bc)^(2)も、aとc、cとdが互いに素であるわけですから、同じ論法で証明できます。それゆえ、acと(ad)^(2)+(bc)^(2)も互いに素になるわけです。これを前提にすると、(ac)^(3)と(ad)^(2)+(bc)^(2)も互いに素であることが判ります。互いに素であるとは、分数として考えると既約という意味ですから、((ad)^(2)+(bc)^(2))/(ac)^(3)は既約分数となります。

既約分数ですから、分母同士は等しく、分子同士も等しいので、2=(ad)^(2)+(bc)^(2)となり、これを成り立たせる自然数a、b、c、dは、a=1かつb=1かつc=1かつd=1の場合だけであることは明らかです。しかし、a>bという条件がありますので、これとa=1、b=1は矛盾します。よって、第7式を成り立たせるa、b、c、dは存在しないことが証明されました。


      nが4を超える偶数の場合

nが6以上の偶数のとき、nを因数分解すれば、必ず奇数と偶数、もしくは4と偶数の積に表せますから、nが奇数の場合か、n=4の場合に還元することが出来ます。たとえば、n=18のときは、n=3*6ですから、X^(18)+Y^(18)=Z^(18)の式を(X^(6))^(3)+(Y^(6))^(3)=(Z^(6))^(3)と書き表すことが出来ます。これはn=3の場合と同じことです。n=8なら、n=4*2ですから、(X^(2))^(4)+(Y^(2))^(4)=(Z^(2))^(4)となり、n=4の場合と同じことになります。


これで、nが3以上のすべての場合において、ふたつの条件(第5式と条件)を成り立たせるa、b、c、dが存在しないことが証明されました。これは、そのもとになった第1式を成立させる自然数X、Y、Zが存在しないことを示しています。第1式はフェルマーの式を変形しただけですから、第1式が成り立たないということは、フェルマーの式を成り立たせる自然数X、Y、Zが存在しないことを意味しています。


これで、証明は終わりです。


どうでしょう。はたして正しく証明できているでしょうか。個人的には正しいと思うので皆様に紹介する次第です。もし、証明方法に欠陥があるなら、ご指摘いただけると幸いです。以上の証明の功績はSさんにありますが、再構成したのは私ですので、文責はhirokuroにあります。ご意見、ご批判、ご感想などは(hirokuro01@yahoo.co.jp)宛にお願いします。



保存版、終わり









修正すべき点の再検討

修正すべきところは、第5式で、「acと(ad-bc)/2が互いに素である」という条件をつけたことを外すことです。この条件は、「aとcが互いに素である」ことと同値ですので、以下の説明では「a,cが互いに素である」とか、「素でない」という条件として表現しますので、ご了解ください。

以前の証明では「素でない」時が検討の対象外になっていました。たしかに、「a,cが互いに素ではない」と証明されたわけではありませんので、証明なしに検討の対象外にしたのは証明としては不備があったと思います。(しかし、それなりの理由があったことについては、別ページで説明しています。

そこで、「a,cが互いに素でない」という条件のもとで、どのようにフェルマー式のX,Y,Zの不存在が証明できるかをトライしてみました。しかし、結果を先に述べておきますと、みごと失敗してしまいました。「互いに素である」とか、自然数の法則を使うだけでは、不存在の証明はうまくいきませんでした。しかし、存在・不存在の条件を整理することは出来ましたので、その点だけを公表しておくことにします。例によりまして、結構間違っていることが多いので、この結論も絶対に正しいという自信があるわけではありません。数日間考えたレベルではまだ間違いが見つかっていないということです。間違いがあるならご指摘いただけると幸いです。


      n=3のとき

「acと(ad-bc)/2が素であるとき」の証明は変更する必要はありません。先の証明を参照してください。ここでは、「acと(ad-bc)/2が素でない」という条件のもとで、n=3ではどうなるかをご紹介します。

第5式には変数が4つありますが、n=3のとき、変数を3つに減らすことが出来ました。この3つの変数が自然数として存在するならば、フェルマー式を成り立たせるX,Y,Zが存在することであり、存在しなければ、X,Y,Zが存在しないことになります。

それでは、やってみましょう。

まず、n=3を第5式に代入します。すると、4(ac)^(3)=3(bc)(ad)^(2)+(bc)^(3)となります。両辺をcで割って、整理すると、4a^(3)c^(2)=3a^(2)d^(2)b+b^(3)c^(2)となります。(3・1式と名付けます。)ここで両辺をa^(2)で割ると、左辺式と右辺第一項式で消えるのに、右辺第2項式でa^(2)が消えません。aとbは互いに素ですから、これが割り切れる唯一の道は、c^(2)がa^(2)の倍数であるということです。そこで、c=akとします。これを代入して整理すると、4a^(3)k^(2)=3d^(2)b+b^(3)k^(2)となります。(3・2式と名付けます。)

この式を書き換えると、4=b(3d^(2)+(bk)^(2))/(a^(3)k^(2))となります。左辺は4、右辺bは奇数ですから、k^(2)は必ずbの倍数になっていなければなりません。一方で、3・2式をそのままk^(2)で割ると、右辺第1項式が3d^(2)b/k^(2)となります。kはcの約数ですから、dとは素の関係にあります。kは奇数ですが、k=3であっても、k^(2)ですから、k=3の場合は割り切れません。ですから、bがk^(2)の倍数になっていなければなりません。両者が成り立つということは、b=k^(2)のときだけです。

これを3・2式に代入すると、4a^(3)=3d^(2)+b^(3) となります。a,dは互いに素です。



      n=4のとき

n=4のときは、少し複雑ですが、変数を3つに整理することが出来ます。

n=4を第5式に代入・整理すると 2=(bd)*((ad)^(2)+(bc)^(2))/(ac)^(3) となります。(4・1式と名付けます。)判りやすくするために、A=(ad)^(2)+(bc)^(2)と置くと、2=(bd)A/(ac)^(3)となります。ここで、bdは奇数で、d>1ですから、必ず3以上になります。すると、左辺が2ですから、このbdは必ず(ac)^(3)の約数となっていなければなりません。

つまり、a,bは互いに素ですから、bがc^(3)の約数であり、c,dが互いに素ですから、dがa^(3)の約数になっているはずです。

そこで、まず、dとaの関係を調べてみます。dがa^(3)の約数とは、a^(3)=dkとなるkが存在することですが、条件により検討の仕方が変わります。そこで、まず、a^(3)=dのときと、aがdの倍数のときを検討し、その後、それ以外のケースを検討します。

a^(3)=dのときは、aがdの約数となり、aとcが「互いに素ではなく」、cとdが互いに素であることと矛盾します。

aがdの倍数とはa=dmと表せるmが存在することを意味します。これを先の式に代入すると、2=(bd)A/(dmc)^(3)となります。ここで分子のdが消えて、bA/(d^(2)(mc)^(3)となります。ここで、dはaの約数ですから、bを約すことは出来ません。また、dとAの関係も、adとは「互いに素ではなく」、bcとは互いに素ですから、よって、Aとdは互いに素の関係になります。また、d>1ですから、bA/dは非自然数となります。非自然数を自然数(mc)^(3)で割っても非自然数です。よって、左辺2が自然数であることと矛盾します。これは、a=dmとなることがないことを示しています。

さて、稀ではありますが、a=dmでなくても、dがa^(3)の約数となることがあります。たとえば、a=6,d=4のような場合です。aはdの倍数ではありませんが、a^(3)=216 はdの倍数になっています。この場合の検討にも、いくつかの場合わけが必要になりますが、あわせて、次のことも踏まえておく必要があります。

自然数は、素因数の積で表すことが出来ます。たとえば、18という数は、2*3^(2)となり、2,3という素因数と、3が2乗であることで成り立っています。a^(3)がdの倍数とは、aの素因数の種類が、dの素因数と同じか、もしくは多いことを意味しています。たとえば、a=18,b=12のとき、a=2*3^(2),d=2^(2)*3 ですから、種類については、aが2,3、dが2,3で同じです。たとえaに他の素因数が加わっても、a^(3)がdの倍数であることには変わりありません。そこで、同じ素因数のところに注目します。もし、aとdの共通素因数のすべてで、aがdより大きければ、a^(3)がdの倍数となるだけでなく、a=dmと書き表すことができます。このときの証明はすでに示したとおりです。

a=dmとならないのは、共通素因数の一部でdの方が大きくなっているからです。たとえば、a=18,d=12では、dの因数の3が2乗となっていて、aが3の1乗であることより大きいということです。そこで、aとdを比べて、dの方が多い共通因数の差をsで表します。aとdをその因数部分だけを表す数と考えると、as=dということです。aの方が多い因数の差をtで表します。a=dtということです。そして、aにはdの持つ素因数のすべての種類を持っていますが、それ以外の数も含んでいることがありますので、その部分をeで表します。すると、a=dte/sという関係になります。sはdの因数部分ですから、必ず約すことが出来ます。

そこで、a=dte/sを先の4・1式に代入すると、2=s^(3)bA/d^(2)(te)^(3)c^(3)となります。(4・2式と名付けます) ここでs^(3)/d^(2)に注目します。sはdの約数ですから、割ることは出来るのですが、割り切れるかどうかを検討してみます。

sとdの関係は、aとdの関係により決まっています。ためしに数字を入れてみます。aとdの共通因数が、たとえば3,5,7であったとしましょう。具体的にはa=3^(2)*5^(2)*7^(3)、d=3^(3)*5^(4)*7^(2)という具合です。この場合、aはdの倍数ではありませんが、a^(3)はdの倍数になっています。この場合、s=3*5^(2)、t=7となります。そして、s^(3)/d^(2)=1/3^(6)*5^(8)*7^(4)となり、s^(3)/d^(2)<1で、分母は消えません。

いろいろなケースがありますが、無限ではありません。そのすべての場合を個別に検討することになります。そこで、あるひとつの素因数で考えてみます。aとdの共通素因数をgとします。これがaにひとつ、dにひとつ含まれているとき、s=1で問題になりません。aのgよりdの方が多いときにのみsが発生します。それゆえ、dにふたつ含まれているとしましょう。すると、s=gとなります。このとき、s^(3)=g^(3)、d^(2)=g^(4) (dは便宜上、ここではdのsに対応する因数を指しています。)で、s^(3)/d^(2)<1となっています。dに3つ含まれるとき、s=g^(2)となり、s^(3)=g^(6)となります。このとき、d^(2)=g^(6)で、s^(3)/d^(2)=1となります。dに4つ含まれるとき、a^(3)がdの倍数になりませんので、成り立ちません。これをすべての共通因数について調べてゆくと、s^(3)/d^(2)<1であるか、もしくは、s^(3)/d^(2)=1であるかのいずれかになるのは明らかで、s^(3)/d^(2)>1になることはありません。

さて、これにより、検討すべき条件は絞られてきました。

もし、ある共通因数でs^(3)/d^(2)<1となったときは、因数全体でも必ずs^(3)/d^(2)<1となり、dは必ずsで割り切れます。そこで残ったdの因数はdの約数(1にはなりません)ですから、bと互いに素、cと互いに素となります。ゆえに、bAを割り切ることは出来ず、この部分は必ず非自然数となります。非自然数と自然数(te)^(3)c^(3)で割っても自然数にはなりませんので、左辺2と矛盾します。ゆえに、s^(3)/d^(2)=1は確定します。

また、tはa,dの共通因数ですから、b,cと互いに素であり、t>1の場合にはbAを割り切ることが出来ず、右辺は非自然数となり、左辺と矛盾します。ゆえに、t=1も確定です。


ここで、eの分析が残っていますが、先にbとcの関係を分析しておきます。bとcについても、aとdとまったく同じ論法が使われ、同じ結果となります。つまり、k,m,t,e,sを、a,dとは別にb,cの間で新しく定義された数と考えますと、c^(3)=bkであり、c=bte/sとなります。そして、s^(3)/d^(2)=1、t=1が定まります。残ったeは、a,d間で決められたeとは別の数ですから、これをfで表記します。

さて、eとfの関係は定まっていませんので、e=pl、f=plとおいて、代入して整理します。そして、両辺をpで割ると、pで割り切れない式がひとつあり、ゆえにp=1となります。同じように、qで割ると、割れない式がありますので、q=1となります。結局、e=l,f=lとなり、e=fでなければならなくなります。つまり、2=A/e^(6)ということです。eとb,dは素、a,cとは「素ではない」関係です。

次にAの部分を調べると、A=(ad)^(2)+(bc)^(2)であり、これにa=dte/sを代入します。t=1はすでに証明されたことですので、ここでは、d/sに注目して、これとaとの関係を確認しておきます。sはaとdの共通素因数部分で、dの方が大きい差分で、aは便宜上sに対応するa側の値で、dもd側の値を意味するとすると、as=dと表現できます。ですから、d/sとは、a側の値をすべて合わせた数で、一応a1と表現しておきます。同じく、c=bte/sとなっていますが、個々で使われているt,e,sはadとの間で決められたt,e,sとは別の数ですが、eはどちらでも同じ数であることは、先ほど証明しました。ここでも、t=1であり、同じようにb/sはcとbの間で決まっていて、cよりbのほうが大きい因数の合計で、c1と表現しておきます。

すると、a=a1e,c=c1eとなり、d=a1^(3),b=c1^(3)ですから、A=a1^(8)e^(2)+c1^(8)e^(2)となります。よって、2e^(4)=a1^(8)+c1^(8) という式を得ることが出来ます。a=a1e,c=c1eということを考慮すると、これを 2e^(12)=a^(8)+c^(8)と書き直すことも出来ます。eはaとcの共約部分で、a1,c1と互いに素、a,cとは互いに素ではない関係にあります。



      nが5以上の奇数のとき

a,cが「互いに素ではなく」、nが5以上の奇数のときは、n=3と基本的には同じです。

二項定理のC(n,r)を使いますので、ここで再確認します。C(n,r)=n!/(n-r)!r! と定義されていて、(a+1)^(n)=C(n,0)a^(n)+C(n,1)a^(n-1)+C(n,2)a^(n-2)+....+C(n,n-2)a^(2)+C(n,n-1)a^(1)+C(n,n) となります。
C(n,0)=1、C(n,1)=n、C(n,2)=n(n-1)/2、...  C(n,n-2)=n(n-1)/2、C(n,n-1)=n、C(n,n)=1 という具合です。

nが奇数のとき、第5式を、nを特定しないで展開・整理すると
2^(n-1)(ac)^(n)=C(n,1)(ad)^(n-1)(bc)+C(n,3)(ad)^(n-3)(bc)^(3)+C(n,5)(ad)^(n-5)(bc)^(5)+ ... +C(n,n-5)(ad)^(5)(bc)^(n-5)+C(n,n-2)(ad)^(2)(bc)^(n-2)+C(n,n)(bc)^(n) となります。(これを5・1式と名付けます。)

ここで、a,cが「素ではない」という条件を式の中に反映させておきます。a=pk,c=qk (p,qは素、k>1)として、代入すると、k^(n)が整理されて、2^(n-1)(pqk)^(n)=C(n,1)(pd)^(n-1)(bq)+C(n,3)(pd)^(n-3)(bq)^(3)+...+(bq)^(n) となります。これを、両辺pで割ると、右辺の最後の式だけが(bq)^(n)/pとなり、b,pが素、q,pが素ですから、p=1が確定します。これは、a=k,c=qaとなり、cがaの倍数であることを示しています。そこで、p=1を代入し、両辺をqで割っておきます。

2^(n-1)q^(n-1)k^(n)=C(n,1)d^(n-1)b+C(n,3)d^(n-3)b^(3)q^(2)+....+b^(n)q^(n-1) (これを5・2式と名付けます。)

この式は、A=C(n,1)d^(n-1)+C(n,3)d^(n-3)(bq)^(2)+....+(bq)^(n-1) とすると、2^(n-1)=bA/q^(n-1)k^(n) と書き直すことが出来ます。左辺は2の累乗、右辺bは奇数です。ゆえに、bはq,kを割り切らなければなりません。しかし、kはbと互いに素ですから、q^(n-1)がbで割り切れるべきことになります。

一方、5.2式をq^(2)で割ると、右辺第一項式だけが、nb(d)^(n-1)/q^(2) という形になります。d,qは素ですから、nbがq^(2)の倍数になっていなければなりません。この場合、nが充分大きいとq^(2)の倍数になることもありえます。そこで、nとqの関係を分析し、そのあとで、bとqの関係を分析しましょう。

nがq^(2)の倍数とは、n=q^(2)kと書くことが出来ることを意味します。そして、nは、C(n,1)=nからきていますので、その他の項数は二項係数です。そこで、nが奇数の場合の二項係数を調べてみます。n=3のとき、(1,3,3,1)となります。n=5のとき(1,5,10,10,5,1)、n=7のとき(1,7,21,35,35,21,7,1)、となります。左右対称で、すべてnの倍数ばかりであることがわかります。これをある程度大きいnまで調べてみると、すべてがnの倍数であるわけではない事がわかります。しかし、その場合もnの約数の倍数にはなっています。

そこで、ためしにnがq^(2)の倍数になっている例を調べてみます。n=9のとき、q=3であるなら、n=q^(2)になっています。そこで、n=9の二項係数を調べると、(1,9,36,84,126,126,84,36,9,1)となっています。q^(2)で割ると、2^(8)q^(6)k^(9)=d^(8)b+84d^(6)b^(3)+126d^(4)b^(5)q^(2)+36d^(2)b^(7)q^(4)+b^(9)q^(6) となります。これをqで割ると、右辺第1項式がd^(8)b/3となり、d,qは素ですから、結局、b,qの関係の分析と同じ結果になります。nがどのように大きな数になったとしても、C(n-3)q^(2)以降は必ずC(n,1)より大きくなっていますので、すべての場合が、b,qの関係に還元されます。

それゆえ、bがqの倍数である場合を検討しましょう。bがq^(2)の倍数であり、q^(n-1)がbの倍数であるとは、b=q^(n-1)であることを意味しています。そこで、これを5・2式に代入すると、2^(n-1)k^(n)=C(n,1)d^(n-1)+C(n,3)d^(n-3)q^(2n)+....+q^(2n-n) となります。



      nが6以上の偶数のとき

nが6以上の偶数のときは、n=4と、基本的に同じです。

二項定理のC(n,r)を使いますので、ここで再確認します。C(n,r)=n!/(n-r)!r! と定義されていて、(a+1)^(n)=C(n,0)a^(n)+C(n,1)a^(n-1)+C(n,2)a^(n-2)+....+C(n,n-2)a^(2)+C(n,n-1)a^(1)+C(n,n) となります。
C(n,0)=1、C(n,1)=n、C(n,2)=n(n-1)/2、...  C(n,n-2)=n(n-1)/2、C(n,n-1)=n、C(n,n)=1 という具合です。

第5式を、nを特定しないで展開・整理すると
2^(n-1)=(bd)(C(n,1)(ad)^(n-2)+C(n,3)(ad)^(n-4)(bc)^(2)+C(n,5(ad)^(n-6)(bc)^(4)+ ... +C(n,n-5)(ad)^(4)(bc)^(n-6)+C(n,n-3)(ad)^(2)(bc)^(n-4)+C(n,n-1)(bc)^(n-2))/(ac)^(n-1) となります。

これを判りやすくするため、A=(C(n,1)(ad)^(n-2)+C(n,3)(ad)^(n-4)(bc)^(2)+C(n,5(ad)^(n-6)(bc)^(4)+ ... +C(n,n-5)(ad)^(4)(bc)^(n-6)+C(n,n-3)(ad)^(2)(bc)^(n-4)+C(n,n-1)(bc)^(n-2) とします。すると、
2^(n-1)=(bd)A/(ac)^(n-1)と表記することが出来ます。(6・1式と名付けます。)

ここで、左辺が2の累乗で、右辺にb、dの奇数がありますので、bdは必ず(ac)^(n-1)の約数になっていなければなりません。a,bは「互いに素」ですから、bはc^(n-1)の約数であり、c,dは「互いに素」ですから、dはa^(n-1)の約数になるはずです。

そこで、まずdに注目します。a^(n-1)=dkということですが、aとdの関係を、いくつかの場合に分けて論じることにします。まず、a^(n-1)=dとなるとき、a=dmと書けるとき、そして、その他のとき、という3つの場合に分けます。

a^(n-1)=dのときは、dはaの因数をすべて含みますが、c,dは「互いに素」という定義と、a,cが「互いに素ではない」という前提がありますので、矛盾が生じます。よって、a^(n-1)=dとなることはありえません。

a=dmとなるとき、これを6・1式に代入して、2^(n-1)=(bd)A/(dmc)^(n-1)とします。(6・2式と名付けます。)すると、分子のdが消えて、分母のdはd^(n-2)となります。これをAの各項目と比較します。すると、その第1項式はn(ad)^(n-2)ですが、これはdで割り切ることが出来ます。第2項式もdで割り切れます。これを順番にやってゆくと、最後のn(bc)^(n-2)だけが残ります。

さて、n(bc)^(n-2)/dの場合において、b,dは「互いに素」、c,dも「互いに素」です。それゆえ、これを自然数とするには、nがdの倍数になっていなければなりません。nは偶数ですが、充分に大きいとdで割り切れることもあります。そこで、割り切れる場合を想定して、A式を分析してみます。Aの項目は二項係数になっています。これは、n=4で(1,4,4,1)、n=6で(1,6,15,20,15,6,1)、n=8で(1,8,28,56,70,56,28,8,1)となっています。nがかなり大きいと、n=6のように奇数でも割り切れることがあります。しかし、Aは二項係数、および(ad)の累乗と、(bc)の累乗の積が加算されて出来上がっていて、dが割り切れたとしても、再度dで割ることを続けると、必ず第1項式でnがなくなり、b(bc)^(n-2)/dという形が現れ、他の項式ではdが消えるようになっています。それゆえ、結局、Aは非自然数となります。非自然数Aにdと素である自然数bを掛け、自然数(mc)^(n-1)で割っても非自然数です。ゆえに、左辺の自然数と矛盾します。よって、a=dmとなることはありえないことが証明されました。

それでは、つぎに、a^(n-1)=dでもなく、a=dmでもない場合を検討します。a^(n-1)がdの倍数であり、上記の証明の場合でもないときは、かなり微妙な話しになります。aとdを素因数分解して、その積の形で表現しますと、aはdの持つすべての素因数の種類を持っています。それぞれの素因数の部分だけを比較して、dの方が大きい部分のaとの差積をすべて掛けたものをsとします。aの方が大きい部分のdとの差積の総積をtとします。そして、aだけにあり、dにはない素因数の総積をeとします。すると、a=dte/sと表現することが出来ます。

これを6・1式に代入します。すると、2^(n-1)=s^(n-1)bA/d^(n-2)(tec)^(n-1)となります。(6・3式と名付けます。)この中のs^(n-1)/d^(n-2)に注目します。sはdの素因数の一部を掛けたもので、d一部ですから、必ずs/d=<1となります。しかし、s^(n-1)/d^(n-2)は、sがdよりひとつ多いので、1を超えることがないことは証明しなければなりません。

そこで、sとdとの関係を再確認します。aとdの共通因数分を比較してsが定まったのですから、その中のひとつの素因数gの場合を考えます。すると、a=g^(u)P、d=g^(v)Q (P,Qは、a,dの残りの部分です。) と表記することが出来ます。そして、vがuより大きいときにsが定まり、uがvより大きいときにtが定まったのでした。ですから、sの分析のときは常にvがuより大きいことが前提になります。そして、gについてのs1はsの一部ですが、s1=g^(v-u)と定義されています。また、d1をdの素因数部分とすると、d1=g^(v)となってます。また、前提として、a^(n-1)がdの倍数ですから、g^(un-u)>=g^(v)であり、un-u>=vとなっていることは確認できます。

さて、s^(n-1)/d^(n-2)=<1の証明のために、gの場合を証明してみます。(s1)^(n-1)=(g^(v-u))^(n-1)であり、d1=(g^(v))^(n-2) ですから、(v-u)(n-1)=<v(n-2)を証明することになります。これは単純に計算してゆくと、先の前提として確認したun-u>=vを導くことが出来ます。よって、g部分では常に、(s1)^(n-1)/(d1)^(n-2)=<1となっていることが証明されました。gで証明されたことは、他のすべての素因数についても当てはまりますので、s全体においてもs^(n-1)/d^(n-2)=<1が証明されたことになります。

そこで、6・3式に戻ります。s^(n-1)は通分により必ず消えますが、d^(n-2)/s^(n-1)という数が分母に残ります。これは自然数で、a=dte/sとなるdの一部ですから、aの約数であり、bと「互いに素」の関係にあります。また、dの一部でもありますので、cと「互いに素」の関係にあります。これでbAを割ると、先のa=dmの場合と同様に、Aの最後の項式 nb(bc)^(n-2) だけが割れずに残ります。ゆえに、d^(n-2)/s^(n-1)=1となります。

次にbA/tを検討します。tはa,dの共通因数部分ですから、b,cと「互いに素」となります。ゆえに、これもまたa=dmと同様に、nb(bc)^(n-2)/tを割り切ることは出来ず、t=1が確定します。

eについては、cとの関係が未定ですので、後で取り上げることにします。

さて、6・3式の 2^(n-1)=s^(n-1)bA/d^(n-2)(tec)^(n-1) において、s^(n-1)/d^(n-2)=1、t=1 が確定したわけですが、同じ作業をc,bの間でも行うことができ、同じ結論が導かれます。つまり、c,dの間でもk,m,t,e,sを定義すると、c=bte/sとなり、s^(n-1)/d^(n-2)=1、t=1となります。ここで使われているeは、a,d間で決められたeとは別の数ですから、これをfで表記します。また、後者のsも状況に応じてrで表記します。すると、2^(n-1)=A/(ef)^(n-1)となります。a,dの共通因数部分で比較したとき、as=dとしてsが定義されていましたが、全体のaと区別するため、このaはa1と表記することにします。また、cr=bとなっているのですが、全体のcと区別するために、これをc1と表記します。すると、a=a1e,c=c1fとなります。これを代入すると、
A=C(n,1)(a1ed)^(n-2)+C(n,3)(a1ed)^(n-4)(c1fb)^(2)+...+C(n,n)(c1fb)^(n-2)
となります。

さて、eとfの関係は定まっていませんので、e=pl、f=plとおいて、代入して整理します。すると、l^(n-2)を整理することが出来、2^(n-1)(pq)^(n-1)l^(n)=Aとなります。そこで、両辺をpで割ると、右辺最後項式だけがpで割り切れません。ゆえにp=1となります。同じようにqで割ると、右辺の第1項式がqで割れません。ゆえに、q=1となります。結局、e=l,f=lとなり、e=fでなければならなくなります。つまり、2^(n-1)e^(n)=Aと表記することが出来ます。eとb,dは素、a,cとは「素ではない」関係です。

a=a1e,c=c1e、d=(a1)^(n-1),b=(c1)^(n-1)ですから、2^(n-1)e^(n)=C(n,1)(a1)^(n(n-2))+C(n,3)(a1)^(n(n-4))(c1)^(2n)+....
+C(n,n-2)(a1)^(2n)(c1)^(n(n-4))+C(n,n)(c1)^(n(n-2))と表記することが出来ます。

これをさらに整理すると、a=a1e,c=c1eですから、
2^(n-1)e^(n(n-1))=C(n,1)(a)^(n(n-2))+C(n,3)(a)^(n(n-4))(c)^(2n)+....
+C(n,n-2)(a)^(2n)(c)^(n(n-4))+C(n,n)(c)^(n(n-2))となります。

複雑ではありますが、よく見ると綺麗に整理されていることがわかります。この条件を満たすa,c,eがあれば、X,Y,Zも存在するということなのです。なければ、X,Y,Zも存在しません。



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