極限の大小


「ある方程式で現れる無限大と別の方程式の無限大ではどちらが大きいのか?」と質問すると、普通の人は、「無限大には大きいも、小さいもないよ。」と答えるでしょう。数学の判っている人は、さらに「無限大は数ではないから、大きさを比較できない。」と答えるかもしれません。しかし、そういう常識で考えている限り、学問の発展はありません。無限大の世界にも、大きさがあったとしたらどうしますか。

y=x^2でxを大きくしてゆくと、それにつれてyも大きくなります。xが無限大になればyも無限大になります。しかし、y=x^4の無限大と比較すると、素人目にはどうしてもx^4のほうがx^2よりも大きな無限大のように感じられます。この感覚は間違っているのでしょうか。私はむしろ、この感覚の方を大切にして、ある数学の世界を研究してみました。


無限大を大きい方から並べてみる

感覚的なものですが、矛盾が生じなければいいのですから、試しに手当たり次第、無限大を作って比較してみることにしました。y=f(x)の式で、xが無限大になるにつれて、yが無限大になるものはなんでも取り上げてみました。すると、意外ときれいに並ぶではありませんか。しかも矛盾は今のところ生じません。判断に迷うところもありません。これは、注目して良いのではないでしょうか。

まず、おおざっぱな分類ですが、y=x^xは非常に大きな無限大になります。y=2^xは比較的大きな無限大です。y=x^2などは普通の無限大です。y=log(n)は比較的小さな無限大です。別に迷うところはありません。

では、f(x)=1+1/2+1/3+1/4+....1/x として、この関数が無限大になることは判っています。しかし、どのレベルの無限大になるのでしょうか。y=log(x)より大きいのでしょうか、小さいのでしょうか。
f(x)=1/2+2/3+3/4+4/5+.... として、この場合の無限はどうでしょうか。すぐに判る人はいるのでしょうか。

このように、あらゆる関数について調べてみて、果たして無限大の中でも最小といわれる無限大は存在するのでしょうか。それとも、無限大の中での最小はいくらでも作れるのでしょうか?逆に大きな無限大は、x^xを重ねて書いていけばいくらでも作れそうですが、2^xの無限大からx^x無限大へは連続して繋がっているのでしょうか。それとも、その間には大きな溝があるのでしょうか。いくらでも研究テーマを作ることが出来ます。

それらのテーマを一応念頭に置きながら、ひとまず、判り易い事例をもっと集めてみました。

f(x)=1+1/2+1/3+1/4+.... については、すでに研究が終わっていますので、その成果を利用すると、f(x)=2.3025log(x)+0.577215+.... となります。ですから、log(x)の無限と同レベルであることが判ります。

f(x)=log(x)^x については、ちょっと予想しにくい式ですが、やってみると、a^xよりも大きな無限になることが判ります。

f(x)=(x/a)^x は、aの値を大きくすればするほど、無限は小さくなりますが、だからといってlog(x)^xの無限に重なることはなさそうです。

f(x)=x^log(x) はどうでしょうか。だんだん予想しにくくなってきますが、これはx^aより大きな独自の無限大なのでしょうか。まだよく判りません。

f(x)=log(1)+log(2)+log(3)+..... +log(x) については、ガンマー関数のところで分析しましたので、すでに判っています。つまり、f(x)=x*log(x)-n*log(e)+.... となりますから、xlog(x)のレベルの無限大であることになります。xよりは大きく、x^2よりは小さいと言うことです。



無限小を比較してみる

無限大があるなら、無限小もあるだろうということは、容易に予想できます。1を無限大で割ったものが無限小と考えれば良いのです。1/x^xは非常に小さな無限小で、1/xは普通の無限小となります。ここで表現方法に注意しなければなりませんが、無限小の程度が大きければ大きいほど小さくなりますが、それを大きな無限小と呼んでは混乱が生じます。大きいか小さいかは程度の表現ではなく、無限の大小であるとしておきます。1/log(x)などは、あまり小さくない無限小ということです。


振動しながら発散する関数の場合


しかし、関数の中には、振動しながら無限大に発散してゆくものがあります。その場合、振動のどの部分を採って無限を認定するかは非常に問題であると言えます。


1に収束する関数にも当てはまる
結局、無限大や無限小への発散の仕方という面もありますので、そうすると、1という数への接近の仕方として、無限大でなくても同じ比較が可能になるようにも思います。

たとえば、f(x)=n^(1/n) などの場合、xが大きくなるにつれ、f(x)は1に近づきます。その近づき方は研究に値しないでしょうか。f(x)=(1/n)^(1/n) の場合は、先の関数と双子のような関係にあり、1に逆方向から近づきますが、その近づき方は非常によく似ています。

ということは、たとえ収束する関数でも無限大を比較したのと同様に大小を考えることが出来ることになります。

この先、いったいどうなってゆくでしょうか。


(付記)   s1さんからメールをいただきました。以下の分析は間違いのようなので撤回します。内容の一部にまだ自分なりに考えたいところがあるので、文章としては残しておきます。分析にお付き合いいただいたことを感謝いたします。 2013/08/10 修正

最小の無限大が存在する。

これよりも小さい無限大はないと言える無限大が見つかりました。 f(n)=1+a1/n+a2/n^2+a3/n^3+... と置いて、a1,a2,a3.... は素数列とします。するとこの式はn=∞で無限大になります。これはf(n)=log(n)よりも小さな無限大で、f(n)=log(log(n))よりも小さいように見えます。ですから、最小の無限大と言えるのではないでしょうか。

この点については、まだ感覚的分析に終わっているので、間違っている可能性もありますが、検討に値する現象のように思えます。少なくとも、最小の無限大が存在しそうな気がしてきました。

最大の無限大はないのに、最小の無限大があるとすると、無限大が一直線になるのでなく、始点を持つのに終点のない線分のような構造になっているということです。自然界の現象としては不自然とも思える結論ですが、考えてみると、温度も同じように最小温度が存在しているのに、最大温度は存在しません。時間も始点があるのに、今のところ終点は見つかりません。世界や自然界は、もしかすると、始点のみを持つ線分が基本になっているのかもしれませんね。







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