フェルマー大定理のnを有理数に拡張すると


(証明に向けての準備)



X^n+Y^n=Z^n というのがフェルマー式ですが、「nが3以上の整数(自然数)のとき、自然数X,Y,Z は存在しない」というのがフェルマーの大定理です。これが1995年にワイルズによって証明されました。彼の証明はいまだに理解できないので、もう少し判りやすい証明はないかと探しているのですが、なかなか見つかりません。何人かの方々が私と同じような発想で、別の証明にトライしているようですが、とても頼もしいと思います。彼らの努力が報われることを祈ります

もともと数論の初歩も知らない人間なので、自分の勉強のため「nを有理数に拡張するとどうなるか」を研究してみることにしました。すると、予想通り、新しい困難にぶつかり、それによりいろいろ考えさせられ、とても勉強になりました。ここにその成果を記録しておきます。

X, Y, Z のほうを有理数に拡張するのは、結局、X, Y, Z が自然数であることに帰着します。これでは面白くありません。注目すべきはnのほうで、こちらを有理数に拡張すると、少し新しい視界が開けてきます。

最初は素人的に考えていたので、nが有理数では X^n+Y^n=Z^n を成り立たせる X, Y, Z はひとつも存在しないだろうと思ったのですが、実はある条件のもとでたくさん存在していました。

そもそも X^n+Y^n=Z^n で、n=1, n=2 も有理数ですから、この場合には X, Y, Z が存在することは自明のことです。しかし、n=2/3 とか n=7/3 などの場合は存在しないだろうとは誰でも思うのではないでしょうか。それなら、それを証明してみようと言うことです。

さて、証明のためには、成り立つことが判っている事例は除外しておかなければなりません。n=1 とか n=2 などの例は初めから除外されます。また、nが3以上の整数の時は、普通のフェルマー定理ですから、ワイルズが証明済みです。また、n=1/a ( aが2以上の自然数 )の時には X, Y, Z の自然数の組み合わせはたくさん存在します。たとえば、X=25, Y=49, Z=144 とすると、n=1/2 で X^n+Y^n=Z^n は成り立ちます。また、nがマイナスのときは、おそらく存在しないでしょうが、まだ初歩の段階なので、ここでは当面除外しておきます。

これら以外の有理数nのとき、はたしてフェルマー式を成り立たせるX,Y,Zという自然数の組み合わせはひとつでも存在するでしょうか。何度も計算したのですが、見つかりません。やはり存在しないだろうという気持ちになりましたが、ではそれをどうやって証明するかです。

いろいろ試行錯誤をしているところですが、まったくうまくいきません。思ったより難しい証明かもしれませんので、ここにいくつかのアイデアを提示して、皆様のご意見、ご批判を受けたいと考えました。連絡先は以下のところか、最初のページに載っています。



■      試しにひとつの具体例に挑戦

まず、証明の手がかりを探すためにひとつの具体例に挑戦してみることにします。 n=5/3 で X^(5/3)+Y^(5/3)=Z^(5/3) の証明にトライしてみます。 X, Y, Z の関係は、前ページの「Sさんの証明」で説明したように、互いに素の関係にある自然数です。

この場合、まずは A=X^5、B=Y^5、C=Z^5 となる A, B, C を考えます。 X, Y, Z は自然数と仮定します。すると、A, B, C も自然数となり、A^(1/3)+B^(1/3)=C^(1/3) となります。a=A^(1/3), b=B^(1/3), c=C^(1/3) とおくと、a+b=c です。この a, b,c は自然数という条件は付いていません。普通は自然数にならない数です。A,B,Cが3乗数のときはa,b,cが自然数になります。

さて、(a+b)^3=c^3 なので、a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 = c^3 となります。a^3=A なので、置き換えると、A + 3a^2b + 3ab^2 + B = C となります。右辺に自然数を集めると 3ab(a+b) = C - A - B となります。左辺の a, b は√型の無理数なので A,B,Cが3乗数でなければ、左辺は無理数になります。ところが右辺は整数なので、A,Bは3乗数でなければならず、a,bは自然数となります。ゆえに cも自然数です。

とすると、a^3=A, A=X^5 ですから、a^3=X^5 となります。このとき、X, a は自然数なので、X=x^3 となる自然数xが存在していなければなりません。つまり、a=x^5 X=x^3 A=x^15 ということです。b, Y の場合も同じように b=y^5, Y=y^3 を成り立たせる自然数yが存在することになります。c, Z も同じように 自然数zが存在します。それを先のフェルマー式に代入すると x^5 + y^5 = z^5 となります。しかし、このような自然数 x, y, z の組み合わせが存在しないことはワイルズによって証明済みですから、x, y, z は存在しません。ゆえに、自然数 X, Y, Z も存在しないことが証明されました。



■      具体例証明の反省


以上の証明はどうでしょうか。一部おかしな所もありますが、その点を反省して、次の証明を考えたいと思います。反省点は、 「 a, b は√型の無理数なので、左辺は無理数になる」というところです。3ab(a+b)は無理数になることは間違いないのですが、それを証明無しに断言して良いでしょうか。abが無理数になることは証明できます。しかし、a+b が無理数になることは証明できません。つまり、A^(1/3)+B^(1/3) (A,Bは3乗数でないという前提)ということですが、これが無理数になることは当たり前ですが、どうして当たり前なのか?証明はどのようにするのか?という点が不明です。さらに困ったことに、これが無理数になると証明できても、さらに ab*(a+b)が、無理数*無理数ですから、この結果が無理数になる保証はありません。これもまた無理数になることを証明しなければなりません。ここまでくるとお手上げ状態です。

以上の困難さは、nがあらゆる有理数のときにも生じるものなので、心して考えてゆかなければなりません。

ただ、ひとつここで気がついたのですが、√型無理数という概念は少しは有用ではないでしょうか。証明に役に立ったわけではありませんが、少なくとも無理数の加減乗除において、少しは法則性を見いだすためには、このような条件がどうしても必要だと思います。

たとえば、a+b=c のとき、a,bが無理数でcが有理数になる例はたくさんあります。a=√2, b=1-√2 とすると、a,bは無理数で、cは有理数です。しかし、もし、a,bが√型無理数のとき、cは必ず無理数になります。ここで言う「必ず」は、「証明された」という意味ではありませんが、常識的レベルで「必ず」と言うことです。これは少しトライしてみれば判ることで、√A,√Bが無理数 (A,Bは自然数)のとき、√A+√B=c が無理数になるのは当たり前です。たとえば、√2+√3 でも、√5+√12 でも、試しに計算すれば判ることです。cが有理数であるためには、必ず a,bが有理数でなければなりません。ただ、問題は、これはまだ証明されてないという点です。



■      √型無理数の定義


さて、以上のことをさらに整理して、以下のように纏めてみました。

無理数は無限個存在しますが、ただ無限なのでなく、どのような小さな有理数と有理数の間にも無限個存在するという、超過密に存在しています。ですから、無理数の種類も無限であり、いろいろな種類の無理数が存在しています。たとえばπですが、このπの有理数倍も無理数であり、πの累乗も無理数であり、πプラス有理数も無理数であり、πとどういう数の演算も結果は無理数になります。ただし例外があります。πに1/πを掛けると1になります。また、πに(1-π)を足すと1になります。このようにある種の無理数を使うと、πも有理数化します。このような無理数の存在が証明には邪魔になっているので、それを排除するようなやり方を考えなければなりません。

さて、フェルマー大定理のnを有理数化するときに登場する無理数は、無理数一般ではなく、ある特殊な無理数のみです。それゆえ、その無理数に名前を付けることにします。それは X^(m/n) のような形になっているので、これを「√型無理数」と名付けることにします。X,m,n は自然数で、nは2以上の数です。Xがn乗数のときは X^(m/n)が自然数になりますが、その場合は√型無理数ではありません。

さて、Xがn乗数でない自然数のとき、X^(m/n)は必ず無理数になることを証明します。そのために、仮定法を使って、X^(m/n)=b/a とし、b/aという有理数が存在したと仮定します。m,n,a,bは自然数で、nは2、および、2以上の自然数、m,nは互いに素で、既約、a,bも互いに素であり、既約です。

このとき、両辺をn乗します。すると X^m = (b/a)^n となります。Xは X/1 ということで、右辺は既約なので、X^m=b^n 1=a^n となります。ゆえにa=1です。つまり、右辺は自然数ということで、X^m=b^n が成り立つと言うことです。m,nは互いに素の関係なので、これが成り立つのは、X=p^n b=p^m となるpが存在していることを示しています。しかし、Xは初めに「n乗数でない自然数」という条件が付いているので、X=p^nが存在することと矛盾します。それゆえ、X^m=b^nを成り立たせるbは存在せず、X^(m/n)は必ず無理数になることが証明されました。



■      √型無理数の乗除算の結果は√型にはならないことの証明


X,Y は互いに素である自然数とします。m,n は互いに素である自然数で、X^(m/n), Y^(m/n) は無理数とします。この場合、A=X^(m/n)*Y^(m/n) とすると、A=(X/Y)^(m/n)となります。X/Yは自然数になりません。ゆえにAは√型無理数ではありません。


■      √型無理数の加減算の結果は√型にならないことの証明 (これは失敗)


X,Y などの条件は乗除算のときと同じです。

A=X^(m/n)+Y^(m/n) とします。すると、XとYは√を超えてひとつの√の中に入る数になることはできないので、Aは√型無理数となりません。

しかし、ここまで来ると判りますが、これは証明しようとしているフェルマー大定理n有理数型の同語反復でしかありません。これでは証明になりません。



■      (X^(m/n)+Y^(m/n))^n = Z の場合

さて、加減算の時はうまく証明できないので、便宜上 「(X^(m/n)+Y^(m/n))^n = Z として、Zは√型無理数にならない。」という前提を作っておきます。これはまだ証明されていない命題であり、将来的には証明したいと思いますが、今はフェルマー大定理n有理数型の証明方法を研究するため、この命題を前提にして、その続きの部分を証明してみることにします。


X^(m/n)+Y^(m/n)=Z^(m/n) において X, Y, Z は互いに素の関係にある自然数と仮定します。m,nは既約です。

まず A=X^m、B=Y^m、C=Z^m となる A, B, C を考えます。 X, Y, Z は自然数なので A, B, C も自然数となります。A^(1/n)+B^(1/n)=C^(1/n) と書くことが出来、a=A^(1/3), b=B^(1/3), c=C^(1/3) とおくと、a+b=c です。

この a, b,c は A,B,Cが n乗数でなければ√型無理数ですが、先の前提からcが√型無理数になることはないので、矛盾が生じます。それゆえ A,B,Cは n乗数でなければならず、a,b,c は自然数となります。

すると、a^n=A, A=X^m ですから、a^n=X^m となります。このとき、X, a は自然数なので、X=x^n となる自然数xが存在していなければなりません。つまり、a=x^m X=x^n A=x^(m*n) ということです。b, Y の場合も、c, Z も同じで、自然数 y,z が存在し、Y=y^n, Z=z^n が成り立ちます。それを先のフェルマー式に代入すると x^m + y^m = z^m となります。しかし、このような自然数 x, y, z の組み合わせが存在しないことはワイルズによって証明済みですから、x, y, z は存在しません。ゆえに、自然数 X, Y, Z も存在しないことが証明されました。



■      一般証明の反省

この一般証明は正しいでしょうか。前提は別として、それ以外のところが正しければ、一応の区切りをつけたいと思いますが、今のところ正しそうに思いますが、どうでしょうか。

しかし、考えてみると、使った前提がフェルマー大定理n有理数型と同じ命題なので、証明というより、これもまた同語反復となっているのかもしれません。

とにかく、一筋縄ではいかないことがよく判りました。









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